#がん治療研究
がんに対して悪玉サイトカインである「IL-6」の作用を善玉に変えることに成功 T細胞の抗腫瘍作用を増強/慶應大学
●「IL-6」がんの成長や増悪に関与・抗腫瘍免疫を抑制
「SOCS3(サイトカイン抑制因子)」排除で「IL-6」が逆に強力な抗腫瘍殺傷能力を誘導
 
炎症性サイトカインとして有名なインターロイキン-6=IL-6は、がん細胞の増殖に関わる上、転移も促進、そしてがん細胞の細胞死=アポトーシスを防いだり、極めつけは悪液質にも関与していると言われる”超”がつく悪玉です。
 
最近では、コロナウィルス感染によってIL-6が上昇してしまい、異常な免疫反応を誘発して免疫暴走=サイトカインストームを起こし、多臓器不全に至って死に至らせるというケースが多発しました。
 
こちらの慶応大学さんの研究は、がん医療領域において、なんとこの超悪玉を善玉に変換出来る技術に光が見えて来た、というものです。
 
プレスリリース全文↓

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2023/8/17/230817-2.pdf

 

善玉化とは一体どうなるのかと言うと、がんをやっつけてしまう”殺傷性T細胞”という免疫細胞の一種の能力を高めるのに加え、がんを守る役割がある”制御性T細胞”も減少させるという、超善玉に変身するというのです。

 

超善玉化の方法は複雑なもののようですが、簡単に言うと、「SOCS3」というIL-6

をはじめとした免疫に関連する情報伝達を抑制する細胞内因子を排除する、というものです。

リリースには「T細胞により無くして・・・」とのことですが、要は、T細胞を使うことによって「SOCS3」が無くなったマウスでの実験成果、ということです。

 

そして、その「SOCS3欠損マウス」は強力な抗腫瘍作用を示したのですが、更にIL-6を欠損させると、その抗腫瘍作用も無くなったしまった、故に、「SOCS3欠損によるIL-6の超善玉化」と言えるわけです。

凄い発見です。

 

さてこれが、お薬や療法となって登場するには、どうやってヒトのSOCS3を排除するのかがポイントになります。

これに関しては、血液がんで治療実績が徐々に積みあがってきているCAR-T細胞療法を利用した実験が行われています。

SOCS3欠損のCAR-T細胞を白血病マウスに移植したところ、効果があらわれたようです。

ただし、これに関してはまだまだこれかの研究となります。

今後に期待したいと思います。