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配信:岐阜新聞
【抜粋】
岐阜薬科大学(岐阜市)の遠藤智史准教授(39)らの研究グループが、がんの生存や抗がん剤耐性化を助長する「オートファジー(自食作用)」に特化した阻害剤を開発した、と発表した。阻害剤が、抗がん剤によるがん細胞のオートファジーを抑制し、治療薬の効果を高めることを初めて解明。遠藤准教授は「新たな抗がん剤併用薬の開発につながる研究成果」と話している。
グループは、オートファジーでタンパク質を包み込む膜「オートファゴソーム」を形成する際に必須のタンパク質分解酵素のうち、「Atg4B」が最も重要な働きをすることに着目。Atg4Bの発生を抑えることで、膜の形成が不完全になることから、Atg4B阻害剤の開発に着手した。
スーパーコンピューターを用い、化合物21万種から有効な種類を見つけ、結合のシミュレーションを経て新たな有機化合物「21f」を作った。21fは栄養不足の培地で処理した前立腺がん細胞と一緒に入れると、オートファジーを抑制し、がん治療薬による細胞の自然死(アポトーシス)を促すことが分かった。
今までオートファジー阻害剤は他の機能に影響することもあり、副作用が大きく、実用化できていなかった。今回の研究では、膜の形成を阻害することに特化しているため、副作用が小さいと考えられており「より安全で、実用化に向けた足掛かりになることが期待できる」(遠藤准教授)という。グループは今後、臨床試験などを行い、最終的には新たな抗がん剤併用薬の開発を進める。遠藤准教授は「岐阜から世界に羽ばたく創薬を目指していきたい」と話した。
グループは同大の遠藤准教授、松永俊之教授、五十里彰教授が中心となり、岐阜大学や富山大学、産業医科大学など6大学で共同研究を行った。研究成果は米国化学会誌「ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー」に掲載された。