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配信:NEWSポストセブン

 

【抜粋】

 手術、化学療法と並び、がんの3大治療の放射線治療。中でも正常細胞への傷害が少なく、効果が高いと期待されるのが、陽子線治療とBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)である。この2つが同じフロアに並んだ医療施設が誕生した。建物地下にはサイクロトロン室が設置され、PET-CT検査用の薬剤も自前で作成可能など検査体制も充実。がんのワンストップ診療施設といえそうだ。

 がんの早期発見、早期治療を目指すには検査から治療環境まで、1つの建物内で完結するのが望ましい。その理想を掲げ、昨年4月から運営を開始したのが、湘南鎌倉総合病院先端医療センターだ。

 本院と廊下続きの建物には1階にトモセラピー/放射線治療室、BNCT室、乳腺外科・婦人科外来、PET-CT検査室などが完備。2階は人間ドックや特定健診を行なう予防医学センター、3階にはオンコロジーセンター、4階は再生医療センターなど診療だけではなく、先進的な臨床研究も可能な施設が整備され、地下にはサイクロトロン室があり、PET-CTで使用する薬剤も自前で作成可能だ。そして、今月から陽子線センターが開設された。

 湘南鎌倉総合病院先端医療センターの徳植公一陽子線治療部長に話を聞く。

「がんの放射線治療は通院できる低侵襲な治療ですが、従来のX線などの光子線は照射により、がん細胞を突き抜け、その先にある正常細胞までも傷つける可能性がありました。しかし、陽子線はピンポイントで、がん細胞に照射が可能なため、正常細胞を傷つけるリスクが少ない治療です」

 陽子線治療は水素の原子核(陽子)を光速近くまで加速し、エネルギーを高めて発生する陽子線を使う。これまでの放射線治療は体の表面には強くあたるが、深いところではだんだんと弱くなっていた。一方、陽子線は体の深いところにある、がん細胞でもブラッグピーク(エネルギーのピーク)を作れるので、正常細胞を傷つけず、がん細胞だけを狙った照射が可能なのだ。また合併症で手術不可な患者でも、治療を受けられる。

 陽子線治療を受けるにあたり、まずは事前に患者の体を固定する専用の固定具を作成する。これで照射中に患者が動くことを防ぎ、病巣だけに照射できるようになる。次に固定具を付けた状態で検査し、陽子線を照射する角度や深さ、1回の照射量、回数などを計算して治療計画を立てる。

「実際の治療では患者にベッドに寝てもらい、そのベッドが動き、適切な場所に体を移動させてから陽子線の照射を実行します。照射する場所の左右にはイメージャーが付いており、これが回転してCT撮影を行ない、範囲を確認しながらの照射となります。ベッドに寝ている時間は15分から20分ですが、照射時間は約2分程度で、痛みも熱さも感じずに終了。小児がんや頭頸部(とうけいぶ)がん、骨軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)、前立腺がんなどが保険適用です。転移のない原発の固形がんには効果的な治療だと思います」(徳植部長)

 この陽子線治療は通院で行なえる。なお、BNCTは来年1月より治療開始予定だ。