「がん悪液質」の治療薬登場で食欲不振や体重減少に悩む患者のQOL改善に期待 | がん情報サイト「オンコロ」 (oncolo.jp)
配信:オンコロ 2021.06.18
【抜粋】悪液質が問題なのは、がんの患者の命を奪う原因になるからだ。「がんの患者さんが亡くなる原因で最も多いのはがん悪液質です。がんの患者さんの4分の1の23%が、悪液質によって命を落としています。肺がん、消化器がんでも悪液質を合併している患者さんは、予後が悪く、悪液質がない患者さんより生存期間が短い傾向があります」と高山氏は指摘。
世界でも初めてがん悪液質の薬として承認されたのが、グレリン様作用薬・アナモレリン塩酸塩(商品名・エドルミズ)だ。視床下部の摂食中枢を刺激して食欲を亢進させ、脳下垂体などに作用して成長ホルモンの分泌を促しタンパク質の合成を促進するといったように、空腹ホルモンのグレリンとほぼ同じような作用が期待される。
非小細胞肺がんに伴うがん悪液質患者174人を無作為にアナモレリン群(84人)、プラセボ(偽薬)群(90人)に分けて12週間投与した治験では、アナモレリン群で平均1.38kg徐脂肪体重(骨格筋)が増加した。プラセボ群では平均0.17kg徐脂肪体重が減っており、アナモレリン群とは明らかな差がみられた。アナモレリン群では3週後までに体重が増えてそのまま12週までほぼ同じ体重を維持した。
治験では、日本人向けの「がん薬物療法におけるQOL調査票」を用いて食欲関連項目スコアの変化をみている。その結果、アナモレリン群で有意に食欲が増加した。ただし、筋力に関しては、アナモレリンの投与による明らかな改善はみられなかった。
消化器がん(大腸がん、胃がん、膵がん)に伴うがん悪液質患者49人を対象に、アナモレリンを12週間投与した治験では、63.3%(31例)の患者がこの薬による効果がみられるレスポンダーだった。レスポンダーとは、徐脂肪体重が投与前より増加するか維持し、調査期間中は減少しなかった患者のことだ。消化器がんでもレスポンダーの体重は服用を始めて3週間で増加し、12週まで維持された。消化器がんの患者の場合、食欲は服用を始めて1週目には食欲が改善し、「食事がおいしい」と感じる人も増加した。
高山氏は、「治験をやっていたときの個人的な印象では、薬を飲み始めて数日で食欲が上がります。早い患者さんだとその日のうちから食欲が改善します」と話した。