櫻葉暦 ~sakurabakoyomi~ -3ページ目

櫻葉暦 ~sakurabakoyomi~

嵐さんだいすき! 櫻葉だーいすき!
主に、櫻葉妄想小説が入っております。
BLに寛大な方のみ、お進みください。
完全自己満足のひとり遊びですが
ご一緒に楽しんで頂ければ嬉しいです♪

 

 

「…翔ちゃん、電話くんない…」

 

 

しおれた雅紀の声を聞くのは

もうこれで何度目だろう。

嫌味を言うのも不憫になり

和也は平静を装った穏やかな声で

何でもなさそうに応じてやる。

 

 

「仕方ないでしょ、ディレクターとか

 プロデューサーとかやたらスタッフ

 多いんだから。 主役の翔ちゃんが

 抜けて帰るなんて無理な話だって」

 

「そんなのわかってる…」

 

「…だったら待ってあげなさいよ

 初顔合わせの食事会じゃ今頃

 かなり気疲れしてると思うよ?」

 

「うん… そだよね…」

 

 

 

消え入りそうな声でそう答えると

雅紀は首元に巻いたストールに

逃げ込むようにして口元を埋めた。

 

 

挨拶するだけだと育美に連れられ

楽屋を出て行った翔はそのまま

収録時間ギリギリになるまで

戻っては来なかった。

 

 

事情を聞こうにも、収録後も再び

慌ただしく連れ出されて行く。

その直前、とっさに育美から逃れ

雅紀の傍まで急ぎ駆け寄った翔は

人目もはばからず、その手を握った。

 

 

 

「…ごめん、後で電話する」

 

「翔ちゃん、どこいくの?」

 

「必ず連絡するから待ってて」

 

 

 

説明している暇はないのか

雅紀からの問いには答えず

翔はすぐ隣に立つ和也に向く。

 

 

 

「…ニノ、あのさ」

 

「まさかまだ見てろって?」

 

「頼む、今夜だけでいいから」

 

「全くどこまで心配性なのよ

 この人が出かけるとでも?」

 

「違う、そういう意味じゃ…」

 

 

 

半ば呆れ果てて、そう返せば

翔は顔を赤らめ口をつぐんだ。

自分が戻るまでの間、雅紀には

心細い思いなどさせたくないと

本人の前では言いにくいのだろう。

瞳を伏せ、ためらっている姿を

冷やかしてやりたいところだが

翔を待つ背後の育美の姿に

時間を気にしているのが見てとれ

和也はひらひらと手を振った。

 

 

 

「…いいけど、延長は高いよ?」

 

「ありがと、恩に着る!」

 

 

 

ホッとしたような笑みを浮かべると

翔は振り返らず部屋を後にする。

急遽、麗香やドラマのスタッフとの

打ち合わせを兼ねた食事会が

行われることになったと知ったのは

雅紀と二人、安西に送られて

帰宅する頃になってからだった。

 

 

 

「…結局、和久井麗香も女だって

 ことですかね。今まであれだけ

 出演を渋っていたっていうのに

 チーフが翔さんを連れて挨拶に

 出向いた途端、快諾するなんて」

 

 

 

雅紀には聞こえないようにと

小声で告げてきた安西に向け

和也は「しーっ」と指を立てた。

 

 

 

「…あの人には教えないで」

 

「ははっ、和さんも同じことを…」

 

「それって、もしかしてN氏?」

 

「ええ、和久井麗香の情報は

 まだ詳しく伝えるなと南条から」

 

「どこまで過保護なんだろうね

 もう隠しようもないのに」

 

「それなら和さんだって」

 

「うるさいよ」

 

 

 

安西とのやりとりを思い出し

和也は胸中でため息をつく。

つきん、とこめかみが痛んで

思わず指先で押さえつけた。

 

 

 

(…冗談じゃないっての…)

 

 

 

翔と雅紀にとって特別な夜が

流れてしまいそうなことも

翔を見た途端、話を受けたという

麗香のあからさまな態度も

和也にとっては納得しかねる

由々しい事態だった。

 

 

 

そして何よりの問題は、隣で今

しょげこんでいる雅紀の姿だろう。

和也のマネージャーである安西には

それなりに気も遣っているらしく

必死に平静を装っているようだが

シートに深く沈んだ身体からは

明らかな落胆が伝わってくる。

 

 

 

「…どうすんのよ、今日は」

 

「………」

 

「このままうち来る?」

 

「………」

 

「どっか行きたいとこあんの?」

 

「………」

 

 

 

問うても反応のない雅紀の頬を

むにっと指先でつまみ上げながら

和也は浮かぶため息を飲み下す。

翔の帰りを待つ間、二人でいても

雅紀の気晴らしにはならないだろう。

それよりも一人にしてやった方が

よほど本人の為のように思えた。

 

 

 

 

 

「…ザイ、どっか近くでとめて」

 

「えっ?」

 

「この人、買い物して帰るって」

 

 

 

和也の突然の言葉に驚いたらしく

雅紀はストールから顔を上げ

翔からの依頼を承知している安西も

困惑した様子で背後を振り返る。

 

 

 

「でも翔さんとの約束が…」

 

「いいよ、翔やんには連絡しとく」

 

「本当に大丈夫なんです?」

 

「うちは保育園じゃないっつうの」

 

 

 

よく口にするようになった台詞で

わざと面倒くさそうな態度をとれば

安西は和也の真意を理解したようで

少し走った後、車を路肩へと寄せた。

 

 

 

 

「…この辺りで構いませんか?」

 

 

 

適当に走ったようでもそれなりに

買い物に適した場所を選んだのは

安西なりの気遣いなのだろう。

メンズブランドのショップが並ぶ

雅紀の好みそうなエリアならば

いい気分転換になるかもしれない。

 

 

 

「ニノ、おれべつに買い物とか…」

 

「あんた好きでしょ? せっかくだし

 服でも靴でも買って帰れば?」

 

「…べつに今ほしいものない」

 

「あっそ、なら勝負パンツ探すとか」

 

「ぱんつっ?」

 

「疲れて帰って来た翔ちゃんが

 泣いて喜びそうなえっろいやつ

 準備して待っててあげたら?」

 

「ばっ、ばっかじゃねーの!」

 

 

 

 

安西の存在が気になったのか

途端に顔を赤らめ猛抗議する姿に

和也は追い打ちをかけるようにして

皮肉めいた口調で続ける。

 

 

 

 

「…お上品な翔ちゃんは意外と

 刺激的なの大喜びかもよ?」

 

「え… それほんと…?」

 

「ブーメランとか紐パンとかさぁ~」

 

「ひもぱん…」

 

 

 

真相など知ったことではないが

今は雅紀の気を引く方が先だ。

その為に多少の偽装をしても

翔には大目に見てもらえるだろう。

案の定、雅紀は何やら思案し始め

しおれている暇もなくなったようだ。

 

 

 

「…そら降りた降りた!

 早くしないと店も閉まるから」

 

「あ、うん…」

 

「どんなの買うか知らないけど

 効果あったら明日教えなさいよ?」

 

「んなの買わねーし!」

 

 

 

「ばーか」と口を尖らせながらも

車から降りる直前、雅紀は片手で

和也の肩を抱いて頭を寄せた。

 

 

 

 

「…でもありがと、ニノ」

 

 

 

 

くすんと鼻にかかった甘えた声が

心からの感謝を告げているのを

気づかないふりで聞き流し

和也は雅紀の頭を押し返す。

大切な小鳥をカゴの外へと

放たねばならないような不安感を

悟られる訳にはいかない。

 

 

 

 

(…ちゃんと飛びなさいよ

 翔ちゃんのところまでね)

 

 

 

 

 

雅紀が降り、広くなった後部座席で

和也はくたりとその身を投げ出す。

手放した姿はあえて確認せずに

流れていく街の景色の方を見やれば

ビルに飾られた巨大な広告の中に

麗香の艶やかな姿が目に留まる。

化粧品メーカーの新商品を手に

優雅に微笑む姿はさすがの美しさだ。

 

 

老若男女、誰の目線からも

麗香の美貌は申し分ないだろう。

その完璧さが逆に勘に触わり

和也は指でピストルの形を真似て

麗香の笑顔へとピタリ合わせた。

 

 

 

 

「…どこまでお人よしなんだか」

 

 

 

そんな様子をミラー越しにでも

確認していたのか、呆れたように

安西が呟くのが聞こえてくる。

 

 

 

「なんか言った?」

 

「いえ… 何か食べて帰りますか」

 

 

 

南条が雅紀の世話を焼くように

安西もまた、和也の一挙一動を

つかず離れず見守っている。

秘めた想いを知る身としては

内心、歯がゆく思っているのだろう。

それでも深く踏み込んでは来ない

安西の配慮が和也には心地良い。

 

 

 

「…じゃあ肉、すげぇ高いやつ」

 

「また珍しいことを…」

 

「ザイのおごりでね」

 

「領収書は南条に回します」

 

 

 

「それいいね」と笑いながらも

視線の先にまた麗香を見つける。

大がかりなキャンペーン中らしく

よく見れば街の至る所に

麗香の笑顔が溢れているのだ。

 

 

膨大な量の広告に気づかないまま

帰宅するのは至難の業だろうが

今夜は雅紀の行く先に少しでも

麗香の姿がない事を祈るばかりだ。

 

 

華やかな通り沿いに並んだ店に

雅紀の気に入るようなものが

何か一つくらいはあるだろう。

そうして気を紛らわしているうちに

翔の方もお開きになるかもしれない。

 

 

 

(早く帰ってやってよ、翔ちゃん…)

 

 

 

実は案外、人見知りなくせに

責任感のやたら強い翔のことだ。

初対面の仕事相手を前にして

今頃さぞや緊張しているだろう。

その疲弊ぶりを想像すれば

雅紀の元へと返してやりたくなる。

 

 

 

 

 

「必要ないでしょう」

 

 

 

 

翔の様子まで気になってしまい

さらに考え込み始めた時、ふいに

軽い調子の安西の声がした。

 

 

 

 

 

「…必要ないって何が?」

 

「紐パンですよ」

 

「あー盗み聞き!」

 

 

 

 

 

わざと大げさにそう返すと

「聞くなと言う方が無理だ」と

安西はすました調子で答え

明日の予定を告げ始める。

和也の思考を切り変える為の

さりげない気遣いだと思えば

もう思案顔は見せられない。

 

 

 

 

「少し寝る。着いたら起こして」

 

「もう着きますけど?」

 

「近っ!どんだけ近いのよ!」

 

 

 

 

他愛もない会話で吹き出せば

少し気が楽になった気がする。

どんなに案じてみても、これ以上

自分にしてやれることがないなら

後は天の采配を祈るのみだ。

 

 

 

 

 

「…大丈夫ですよ」

 

 

 

 

 

まるで和也の胸中に応えるように

ぽつりと安西がそうつぶやくと

その場に生まれた不思議な安堵が

夜の車窓から流れていく。

それが雅紀の元に届くのを祈って

和也はそっと瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ~ つづく ~

 

 

 

 

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚

 

 

 

 

 

 

こんばんは、micaと申します。

先週、おっかなびっくり状態で

かなり久々に更新したのですが

思いがけず、また見て頂けて

衝撃を受けた次第でございます。

 

 

ずっと見てくださってた方々が

再びのぞいて行ってくださり

申し訳ないやら有難いやらで

オロオロしてしまいました。

 

 

そんな私から、ささやかなお礼と

感謝の気持ちを込めさせて頂き

コイゴコロの続きを出しましたが

実はこれ、今年の6月17日に

更新しようと作ってた分でした。

(↑新しく作れよ…)

 

 

ニノちゃんBirthdayに合わせ

にのあい回にしたらしい。

改めて自分で読み返しても

何の記憶もないのがコワい…

 

 

そして長い…あーんどクドイ…

「ちっとも進まねーな!」と

作った本人でも思うような話を

読んでくださる方の忍耐。

まるで忍耐力養成ブログ…

感想を聞くのも恐ろしいので

関係各所、色々閉じてますが

何卒ご容赦ください。

 

 

 

完全自己満足でやってますが

同じ方に見て頂けるのは

やはり何よりのご褒美です。

「みたよ~!」と残してくださる

お心遣いと勇気に感謝。

 

 

 

いつもありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

mica