冷たく晴れ渡った秋の空。
金木犀は昨日までの雨で殆ど花を落としてしまったようで、もう残り香程度。
開けた窓からベランダへと出てみる。
時折冷たい風を感じる。
ほんのこの前まで暑い夏だったのに、急ぎ足で冬に向かっている…そんなことを考えさせられるような、独特な風だった。
少し胸がちくりとした。
秋とは、そういうものだった。
「寒い」
後方からけだるい声がした。
振り返ると、声の主はやはり、ベッドから身体を起こしたばかりの彼。
吹き込む微風の冷たさに観念したらしい。
そんな格好だからだよ…
彼は上半身に衣服を纏っていなかった。
こちらの意図を眼で理解したらしく、口をへの字に曲げた彼は黙ってベッドの傍に落ちていたシャツやらズボンやらを拾い上げ、のんびりとそれらを纏い始めた。
その様子の途中までを見送って、僕はまた空を眺めることにした。
「なぁ」
思いの外、近いところから声を掛けられた。
ぎょっとして右に向くと、すぐ傍に彼が立っていた。肩が触れるほどの距離だった。
「空を眺めるのって、楽しいのか?」
何の含みも無い、彼らしい質問だった。
僕は少し困ったような顔に笑みを載せたそんな表情で、何も答えず、薄ら青い空にただ視線を放っていた。
「まぁ、賢が楽しいならいいんだけど」
彼の手が僕の左肩に回る。
刹那、右方向にぐいっと寄せられた。
もう驚くことは無くなったけれど、胸の奥から頭の先にかけてじわじわと沸き上がる何かは今も新鮮で、それがまた心地好かった。
「冷えてる」
寝起きの君があったかいだけだよ。
「賢」
なに?
「名前、呼んで?」
どうして?
「寂しい」
珍しいな、君がそんなこと言うなんて。
「なぁ…」
なんて情けない声出してるんだよ。
「このままなんて嫌だかんな…」
この、まま?
そうか、僕は
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「ね」
「お?」
「もし僕が君と口がきけなくなったら、どうする?」
「んなこと絶対ねーだろ。俺達が喧嘩なんか…」
「違うよ、そうじゃなくて」
「ん?」
「いきなり声が出なくなったら…っていうか、そんな感じになったら。どうする?」
「んー…どうするだろうなぁ…多分、何としてでも喋らせるかな」
「そんな無茶言うなよ」
「だって…賢の声、いつでも聴きてぇし」
「…そっか」
「つーか何なんだよいきなり。そんな起こるワケない話なんかしてさ」
「ん?別に意味は無い」
「なんだそれ」
「気にしない、気にしない」
