久しぶりに、「ソル姫」&「レマ竜」の、ゲオルグさんとエセルローズちゃん夫妻のことを思い出したので。ええ、この二人のもうちょい詳細については、3月6日の記事を見てくださいまし。
ヴィゼルニム帝国議会の堅物・真面目なオヤジ議員さんと、その「やわらかい」妻です。
プラリアのようなもの、ということで。
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夏の、夕暮れである。
結婚7年目、世間では倦怠期に入ってたってちっともおかしくはないというのに、既に子供5人もこさえてて、いまさら新婚ムードでもないだろうに---若手議員達が起草してきた新しい法案に、「ご意見番」としての目を通しての添削中で机に向かっているゲオルグ・レーゲンヴァルトの肩に、さすがに5人の子持ちとなって外見が「美男」から「美女」にレベルアップ(?)した、しかしもはや新妻とは逆立ちしたって呼べないエセルローズがしなだれかかる。
仕事熱心な夫がなにをしているかなど、先刻承知なのに、尋ねてみる---「なにをなさっているの、ゲオルグ?」
結婚後7年。ようやくエセルは夫のことを「おじさま」と呼ばわりすることはなくなっていた。しかし客観的に見ると、ゲオルグは既に中年も中年で、「おじさま」もしくは「おっさん」扱いするに何不自由ない年まわりなのだが。
「・・・頭の体操を少し。」と、ゲオルグ。ペンを走らせる手は止まらない。
「あなたの「少し」は、お昼ご飯のあとずっとのこと、なのね? 」笑みをたたえながらエセルはゲオルグの頭(こうべ)を抱きしめた。「辞書に載っているとおりの「少し」の時間、お庭でもお散歩しませんこと? もうすぐ夕食の準備も出来てくるでしょうし・・・それに、あんまり考え事ばかりしすぎて、禿げたりしたら、せっかくの魅力が台無しになるわ。」
目隠しをされては敵わない。それに、どんな男も結局は恐妻家の素質はあるものだ。彼は、ペンを置いた。たしかに、多少疲れも出てはきていたから、気分転換に散歩するのは良いアイデアだと思えた。
「なるほど。では、ハゲ防止のためにも、妻に好かれたままであるためにも、そうするとしよう。」
すたすたすた。戸口に向かう。
「一人で行ってどーするのよ!!」
エセルが追いかける。
庭はよく手入れされていて、木々や池、奇石の類などもいい具合に配置されてある。日も暮れかけ、風もやさしく、ここちよく吹いている。
池を見下ろすあずまやに二人、腰を下ろす。
池の水面がそよ風に揺れて、西に傾いた陽の光をきらきらと複雑な模様に織りなおす。
空の方は、というと東の方からゆっくりと夕暮れの色が領土を広げつつある。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
二人きりでお散歩♪と、エセルは喜んだのだが、夫君の頭の中では、まだ先ほどの法案草稿の内容が反芻されては朱が入れられているらしい。妻からの語りかけには生返事で、せっかくの夕刻、刻々と美しく変化する、あたりの光線や景色にも関心のない様子。
「真面目で思慮深くて優しくて、けれど堅物のおじさま」に恋焦がれて一緒になった---のではあるが、自分と二人きりの時は、もう少し違った方向に優しくあってほしい、と思うのは別に贅沢なことではないわよね、と妻は考えた。
「・・・アナタ。」と、決意をこめた声でエセルは夫に向かった、「この状況を、どうお考えですの?」
「この状況?」
厳し目の妻の語調に、思索の迷路から現実に引き戻される、ゲオルグ。
「そうですわ。夕暮れ時、恋人達の時間、二人きりのあずまやに座って、風景を愛でて・・・アナタの隣にいるワタシは、一体ダレ?」
「・・・エセルローズ・レーゲンヴァルト、私の妻だと思ったが。違うのかね。」
夫は至極真面目に答えた。
「・・・もうっ、ゲオルグさんのバカっ! ・・・せっかく、この夏はおちびさんたちも別荘の方にバカンスまかせて、二人で帝都に残って、そうして今、やっと二人っきりで・・・きれいな景色を見ながら、あなたに身をゆだねて、優しいささやき、甘い言葉を、聞かせてもらいたいのにっ!」
表情は変わらなかったが、ゲオルグの頭の中はパニくっていた。
かわいい年下の、何よりも大切な宝物である妻に振り回されるのは慣れてはいるのだが、いかんせんこの男、女心に関する学習能力がない。
パニくりながらも、一生懸命に考えて、そして彼はエセルローズをおず、と不器用に抱き寄せた。
そうして彼女の耳元に、やさしくささやいた、「小倉羊羹」と。
(・・・は?)
不思議そうな様子で身を硬くした妻に、さらにささやきかける、「・・・はちみつ、練乳、いちごみるく、マロングラッセ、プディング、ミルフィーユ、チョコレートパフェ、・・・・」
「・・・ちょっとまって、アナタ。なんですの、それ?」身を引き剥がし、彼女には珍しく眉間に皺を寄せて問う。
「おまえが聞きたいと言ったから・・・「甘い言葉」。」困ったように、夫は答えた。
「それはちがいますっ!!!全然違います!!!」
それでも夕食をとるために屋敷に戻る頃には、なんとなく仲直りは成立していた。
どっとはらい。
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えー。・・・わたしも熱射病でやられたようです。おやすみなさい(逃走)。