「外に出る練習も少しずつ始めた方がいいよ。」
病院の先生にそうアドバイスをもらった。
この時点で私が大丈夫だった場所は、家の中と母に付き添ってもらい通っていた心療内科だけだった。
心療内科に行く際は、いつも飲んでいる抗うつ薬の他に必ず安定剤を飲んでいた。
ずっと家にいるとどんどん外に出るのが怖くなってくる。
自分の足で、一人で歩くのが怖いのだ。
でも、いつかはその一歩を踏み出さないといけない。
無理しちゃいけない病気でも、勇気を出さないといけない時はある。
病院へ行った次の日、覚悟を決めて玄関の扉を開けた。
心臓はバクバクしていた。
玄関から一歩踏み出して、庭を数歩だけ歩いた。
ほんの数歩。
10歩も歩いてなかったかもしれない。
その日はそれが精一杯だった。
でも、安定剤を飲まずに一人で外に出れたのが嬉しかった。
それから、徐々に外に出る距離を伸ばしていった。
最初は門の外まで。
次は団地をまわって。
調子がいい日は家の裏の方にある大きな木まで散歩しに行った。
最終的には散歩に出たらその大きな木の下に祭られている神様に手を合わせ、
「いつか体調が良くなりますように」とお願いすることが日課になっていた。