息子よ。君が採るべき稼ぎ方の戦略についてまとめておこう。
社会を構成する個々のメンバーの経済力の格差はどこから生じるのか。
一つには、人的資本までを含めた自分の資産でどれだけリスクを取るのかだ。リスクを回避したがる者が提供する価値を、リスクを取ってもいいと思う者が吸い上げるのが経済循環の仕組みだ。
私有財産たる資本でリスク・テイクの対価を吸収し、これに株式投資を通じて参加することができるのが、現在の資本主義の仕組みだ。
この世界の経済力のチャンピオンは、主に創業者で株式をたっぷり持っているオーナー社長であり、圧倒的だ。
図の中で「サラリーマンの群れ」と記した場所に入る丸(「点」に見えるかも知れないが)の数が圧倒的で、彼(彼女)らが提供する価値が養分となって経済を循環している。
ここのエリアには、似たもの同士の労働者タイプAが集まっている。彼らには、安く買い叩かれやすいことも含めて、「経済的に不利な重力」が働いている。ここにだけとどまる人生を全力で回避せよ。
若い人が早く気が付いてくれるといいのだが、自分の不利を認めることは時に精神的に難しい。安く働く仲間同士で群れて「人生はこんなものだ」と諦めるようなケースが少なくない。将来の君がそうならないために、今の君に対して、父はこの本を書いている。
さて、人生では、必ずしもお金持ちを目指す必要はないのだが、経済的に不利なコースは歩んでほしくない。たとえば、これから世に出て一旗揚げようと思う若者はどのようなコースを目指すといいのか。
答えは、「狙い筋A」のコースだ。すなわち、自分で起業する、起業の初期に参加する、ストックオプションをたくさんもらえる条件で働くなどで、株式性のリターンを求めるのだ。この場合、リスクにさらす賭け金は自らの「人的資本」だ。使えるものは、惜しみなく、早く使え。
株式性の報酬にアクセスする働き方の機会がなかなか得られない時、あるいはもっとありそうな場合として、リスクを取るには気が小さい時、せめて自分が持っている金融資産にだけでもリスクを取る役割を担わせようとするのが、投資だ。図では「狙い筋B」として示した。
率直に言って、いかにも「チキンな(臆病な)」選択肢だ。「狙い筋A」の人生よりも退屈だし、経済力を作るまでにはひどく時間が掛かる。それでも、何もしないよりは随分いい。
もちろん、「狙い筋A」と「狙い筋B」を併用して構わないし、そうするのが合理的だ。これからを生きる君には、適切なリスクを取って、効率良く稼いで、機嫌のいい人生を送ってほしい。
稼いだお金はおおらかに使うといい。特に自分への投資を絞ると将来の自分が貧相になってしまう。自己投資の中身は、①知識、②スキル、③経験、④人間関係、⑤時間、だ。
そして、人生の途中でお金が足りないと思ったなら、節約よりも先に「もっと稼ぐ方法はないか」と考えるようであってほしい。
君の人生はその方が圧倒的に面白くなるはずだ。
お金の心配をせず、気分よく生きていくために…余命3カ月の山崎元さんが大学生の息子に書き残したこと「低賃金で代替可能な労働者」ではいけない