金・地位・名誉

この世は欲でできている。

私はそのうちのどれを手にしたのだろう。


男も齢35になると、常に迷いが付きまとう。

こんなことをしていていいのだろうか

こんなことをしてきてよかったのだろうか

自分は何を信じて生きていけばよいのだろうか。

人生何のために生きているのか。


私に足りていないものは何だ?

私に足りてなかったものは何だ?

運か?

本当か?

運のせいにしてないか?

そんなことを考えながら日々暮らす。

原チャリにまたがっていると、そういうことを考えてしまう。


鬱屈した気持ちで家に帰る。

こういう時は、何もかもうまくいかない。

玄関を空けた瞬間、異臭が漂う。

やりやがった。

流し忘れてる。

家を出る前の自分を殴りたい。

イライラは募る。

何に対して?

自分に対して。

いつの?

過去の。

今日家を出る時の自分にじゃない。

もっと、もっともっと過去の自分。

人生って何なんだ?

私にとって一番大切なのは一体何なんだ?

便器の前に立つ。

とりあえず、流そう。

水のタンクの横にあるレバーに手をかけ、

便器の中にたたずむ

これから下水へと旅立つ醜悪なものを見る。


私はギョッとした。

そこに、全ての答えがあったのだ。


「心」


想像だにできなかった。

今朝流し忘れ、家に帰った私を異臭で出迎え、

醜悪だと思い込んでいた「それ」は

見事に「心」という字を描いていた。

長いの1本に短いの3本。

それらが見事なバランスで「心」。


そうだ。

私にとって一番大切なのは、「心」だ。

自分の心を一番優先して生きてきた。

金や地位や名誉じゃない。

決してそれらが欲しくないわけじゃない。

でも、私にとって失って一番つらいのは

金じゃない、地位じゃない、名誉じゃない。

心だったんだ。

自分の心。見てくれる人の心。

どう思われてもいい。

大切なのは自分がどう思うか。

そして人の心を動かせるか。

そうだ。

私はいつだってこの心を自分から生み出していたじゃないか。

他人から目を背けられようと

なんなら自分がしかめっ面しながらでも

自分が生み出して、

そして流されずに心を描いていたではないか。


私に足りないものはなんだ?

運か?

馬鹿野郎!

十分足りてるよ。

むしろここまで運だけでやってきたようなもんだ。

これでも足りないなら、

運なんざいくらでも自分からひねり出してやる。


金・地位・名誉

私は手にしたか?

してないね。

でも、私にとって一番大切な心は手放してないよ?

私にとってそれだけで充分だ。

それだけでこれからもやっていける。と思う。

わかったか私!


ウン!



…ってことが脳内で繰り広げられていた今日でしたとさ。

ちなみにそんなこと考えてたら流すに流せなくなって

ドラクエやってトイレ行ってもう一回見たら

再びギョッとした。


「少」


ウン、流そうか。