クリスマスに一切関わることなく無言、無表情でひたすらメタネタ書くこの虚しさ。トホホ。

このバンドも長年謎だった。ジャンル的に違うところにいる、メタルのカテゴリー外にいたから知られていないのだろう。メタルのジャンルにこだわっていてはなかなか発見できない。ジャンルに捉われすぎると良い物を自ら避けてしまうことになる。
日本では全く無名のこのバンドもそうだ。伝統だけに忠実な化石の如くのメタルバンドにはない、ぶっ飛んだカッコよさがある。


WALTONS


85年、ベルリンで結成されたトリオ。
バンド名に「THE」が付いてたり付いてなかったりする。
本当の兄弟なのかラモーンズ的なあれか知らんけど、メンバーが全員ウォルトン姓を名乗っている。その音楽性は基礎の部分に恐らくパンクがあり、そこにカントリーやブルーズなどのアメリカンな田舎の要素をぶち込んだカウパンクを信条とする、だが演奏力は相当なもので、のどかで気楽なイメージなのにリラックスできない緊張感がある。

85年に「HERE COMES THE WALTONS」でデビュー、88年に2nd「THANKS GOD FOR THE WALTONS」発表、初期はほとんどロカビリーみたいな感じ、この2枚のジャケ見ても絶対買わないだろうと思えるぐらいメタル要素皆無、89年に3rd「TRUCK ME HARDER」、このアルバムで初めてこのバンドを知った。

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TRUCK ME HARDER


タイトル通りトラックのエンジンをかける音から始まる。
もうあからさまにメタルとは違うリフやメロディ、カントリーっぽい乾いた風景が目に浮かぶ、田舎っぽいのどかさはあるが、演奏にスピード感や独特のテンションがあるからそんなに呑気な感じはしない。トラックや牛に追いかけられたりしてるような変な緊張感がある。
カントリー/ブルーズを王道メタルとは違う切り口で、激烈に演ったらこうなったって感じ。
最近メタネタでやったブルーズスラッシュ、VIOLENT PLAYGROUNDより100万倍ハイレベル。
これ聴いたらあんなものはゴミだ。メタルだけの頭では絶対に作り得ないギターリフが、いちいちカッコいい。
メタルとはちょっと違う、ハイテンションやスリルを感じたければお勧め。

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91年の4thアルバム。


THRUST OF THE VILE


参った。前作は単なる小手調べ、「オレたちはこんなバンドですよ」と紹介されたような作品だった。方向性は全く同じ、だが曲の質が恐ろしいほど上がった。もともと能天気なだけではない寂しげな部分も持ち合わせていたが、それが比べ物にならないほど充実、1曲目の “Winter” で「はっ!」と息を呑んだ。
このカッコよさはなんだ?荒々しいのにタイト、軽薄なのに深みのあるメロディ、独特の疾走感に乗って無機質なのに寂しげなサビのコーラスが耳に突き刺さる。

そして曲作りの発想が根本的に違うのにスラッシュメタル並の破壊力を持つ “The Cry Of The Wild Goose”、この異常なテンションと緊張感はなんなんだろう?ガチョウの大群に追いかけられるイメージか?そもそも普通のメタルとは激しさのベクトルが違う。(調べて初めて知ったが50年代曲のカヴァーだそう、だとしたらアレンジが強烈)
以降も強力曲連発、D.A.D.っぽい “Homewardbound” や “The L&N (Don’t Stop Here Anymore)” も独特の呑気さと緊張感を持った良曲、B-1の “Rain” は孤独を感じるほど寂しい曲。
そしてとどめが “The Eagle Flies (Like A Bomber Again)”、そこらのメタルやスラッシュバンドなど足元にも寄れないほど激しくメロディアス、そして呼吸が荒くなるほどの緊張感とフックまで備わっているのだ。
統一感はあるのにバラエティに富んだ曲構成は、見事と言うほかない強力アルバム。メタルにこだわらず、ジャンルに捉われずにカッコいい音楽を好む向きに勧めたい。



92年の5th。


REMAIN IN RUST


前作に勝るとも劣らない、らしさ全開の傑作。やってることは変わらない、方向性に全くブレはないもののどんどん上げてきている、楽曲の質も演奏力もテンションも。
彼らのアイデアは底なしか。このアルバムも1曲目でガツンと喰らわせてくれる。“Lose Innocence For Extasy” から2曲目 “Trust Me I’m A Doctor” へ間髪入れずに突入、これが死ぬほどイカす。弱ってた時代のMOTÖRHEADなら軽く吹き飛ぶほど。飄々としてどこか冷めてるのにだらしさはなく、スリルを感じるのだ。そしてその2曲の次にくるから “No I Can’t Testify” が生きる。優しいメロディに荒野の風を感じる。
この3曲の流れはアルバムの構成として完璧、聴き手を引き込む、興奮させるという意味では。緩急が上手すぎる。さらに次曲 “In An Abstract World” のギターリフがキャッチーすぎて笑顔になる。メタルにもこんな耳福的リフはそうない。後半やや弱いような気もするが、前作と並んで好きなアルバム。

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そしてもう1枚、94年「ESSENTIAL COUNTRY BULLSHIT」を最後に姿を消す。ここで解散したのだろう。
調べたら2005年と2008年にもアルバムを出しているが、再結成したのかな?

89年にこんな季節物EPも出てる。


CHRISTMASTIME AND COUNTRY WILDLIFE


WALTONS風クリスマスソング含めた4曲入り。しかしこのバンド、ふざけたイメージの割にルックスが良いなぁ。

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ハードロックやメタルはカントリー/ウエスタンと親和性が高い。METALLICAがライブのイントロに使ってた “Ecstacy Of Gold” もそうだが、荒涼とした大地のイメージや、男の哀愁的な世界観はHR/HMに通ずるものがある。
MOTÖRHEADにもそういう時代があったし、DESPERADOSなんてその究極形と言える。
このWALTONSも何も知らずに聴いたら、絶対ドイツのバンドとは思えない、それぐらい本場のカントリー/ウエスタンのスピリットを感じる。



追記。

このネタ書いたら数十年ぶりのWALTONSブームがやってきて、興奮状態で買っちまった。

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ESSENTIAL COUNTRY BULLSHIT


Drが替わってるが、編成はトリオのまま。
聴いて思った。「??」
カウボーイとか西部劇的な世界は相変わらず、でもあの独特の緊張感が減退、一層のどかになった。
悪くはないが牛が追いかけてくるようなイメージから、牛がのんびり草食ってるイメージになった。西部劇というより牧場とか農場にいる気分。
だんだん退屈になってきて、作曲クレジット見たら彼らのオリジナル曲がない。なるほど、どうもこれはその手の曲、カントリーミュージックのカヴァーアルバムのようだ。だから4th、5thのテンションを期待すると結構がっかりする。
これは買わなくても良かったかもね。

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“Lose Innocence For Extasy”


“Trust Me I’m A Doctor”


“No I Can’t Testify”


“In An Abstract World”


“The Cry Of The Wild Goose”


“Rain”


"The Eagle Flies (Like A Bomber Again)"


“Christmastime On Walton’s Mountain”


Thank God for/Spv

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Truck Me Harder/Waltons

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Thrust of the Vile/Waltons

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Remain in Rust/Waltons

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Essential Country Bullshit/Steamhammer Europe

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Spirit of Cowpunk/Waltons

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