クサレ者にとって絶対に忘れられない名門中の名門、イギリス、ハルにあったメタル系インディレーベル、EBONY RECORDS。GRIM REAPER、SHYと2つのメジャーバンドを送り出し、他に一般的には無名ながらも数多くの良バンドを擁し80年代のメタル史に功績を残した。
そのEBONY初期にGRIM REAPERやSAVAGEと並んでアグレッシヴサイドの看板バンドとして知られるのがこのCHATEAUX。


CHATEAUX


当時なんて読むのか分からなかった。「チャテアウックス」などと無理やり読んでたクサレ者は多い。
「シャトー」フランス語由来の英語で城のこと、ブルーシャトーのあれ、「森と~泉に~かーこーまれて~♪」
これ分かる人はズバリ年寄りだ。

81年に結成されたチェルトナム出身のトリオ。Gのティム・ブロートンを中心とし彼のソロバンド的な側面もある。
EBONYから7インチのシングルを発表した後83年に出た1st。


CHAINED AND DESPERATE


このデビュー作でなぜかGRIM REAPERのスティーヴ・グリメットがVoを担当している。すでに彼はGRIM REAPERでの活動を始めていたはずだが発表されたのはこちらのが先。

時期的に少々外しているもののこれはNWOBHM、完全にその音。余計な装飾のない生々しいメタル、激しいだけじゃない、甘いメロディもない、プロデュースも最低限、ガレージで演ってるようなシンプルなメタル。
侘びた壺や茶碗など、価値があるのかないのか分からんような骨董を楽しむ感覚に近い。NWOBHMでも一流どころだけしか聴かない者にはなかなかこの感覚は伝わらない、地味すぎるから。でも少し地下を覗いた者ならこの味わいを楽しめると思う。

ROXXCALIBURがカヴァーしてたのはこのアルバムの “Spirit Of The Chateaux”。「CHATEAUXカヴァーするならもっといい曲があるのに」とちょっと残念に思ったことを覚えている。

84年の2nd。


FIREPOWER


1stと同じくEBONY専属画家、ゲイリー・シャープの描いたジャケが目を惹く。
だがティム以外のメンバーは全て替わりB&Voのクリス・メイソン、Drのクリス・ダドソンが加わった。このメンバーチェンジが功を奏したのかバンドはパワーアップ、アルバムタイトル通り火を噴くような猛烈さを身に付け、特にB兼Voのクリスが炎のVoを聴かせてくれる。うわずる寸前の喉が張り裂けそうなギリギリ感が緊張感をさらに盛り上げる。
スティーヴのVoも良かったがCHATEAUXにはクリスの方が合っているように思う。スティーヴの方が上手いのかもしれないけど緊張感はクリスのが上。
地味だった前作に比べると暗闇から飛び出したような突き抜けた感があって、開放的なジャケのイメージに通じるものを感じる。激しい音楽やってるのにしっかりイギリスの音になっているのがたまらない。

オープニングの “Rock And Roll Thunder” はやかましいだけのスラッシュバンドなど軽く吹き飛ばすほどの強力曲。
“White Steel” や “V8 Crash” も激烈さとメロディが最高のバランスで融合しててスリル満点。スラッシュメタル登場以前、最も激しい音楽をやっていたバンドのひとつなのではないかと思わせる。全曲最高、激烈な1曲目に続く2曲目の “Roller Coaster” やB-3の “Street Angel” のリフがキャッチーすぎて笑える。

85年の3rd、最終作。


HIGHLY STRUNG


ジャケ絵がゲイリー・シャープでなくなったのは残念だが内容の方はさらにパワーアップ、最終作にして最高傑作。
メンバーは2nd時と同じ。2ndのパワーそのままに曲の質を上げている。タイトル曲でありオープニング曲 “Highly Strung” のフランジャーのかかった回転するギターリフにゾクゾクする。そしてハイハットのカウントとともに疾走する様は圧巻、このギターリフの音こそEBONYの音だ。音質の悪さで定評のあるEBONYであるが、この独特のギターの音がプラスに作用している好例。
火を噴く強烈なVoと金属感満点のがっちりしたギターリフ、そしてスピード感のあるドラム、そこらのスラッシュメタルなど足元にも寄れない激烈さ、しかし彼らはしっかりした歌メロを持っているからスラッシュメタルのように破壊力のみに特化されない、ちゃんと曲の良さを実感できるのが良い。
これまた全曲最高、“Highly Strung” もカッコ良すぎるがB-3の ”First Strike” も好きで当時聴きまくった。

chateaux3

前回のCHROME MOLLY同様NWOBHM時代をそのまま引き継いだような音楽性、NWOBHMバンドと考えても問題ない。
特にこのCHATEAUXはNWOBHMとスピード/スラッシュメタルの時代の接続期にいたバンドとも言える。後のスラッシュメタルほどかっちりしてない、まだR&Rの雑さを残しているところがいい。ブリティッシュの重厚感とR&Rのノリが見事に両立してる。

そして主役がGのティムということで彼のギターが中心の作りになっているのがこのバンドの大きな特徴となっている。後の時代の高速ギタリストのような細かい正確さはないが、確かな腕と才能を持ったギタリストだと思う。インスト曲、”Phalanx” にギタリストとしての彼の魅力が凝縮されている。荒々しく聴こえるが本質的にはシェンカーやゲイリーとかそっちのタイプで、ブルーズっぽさを残している感じ。

2003年に「FIGHT TO THE LAST」というタイトルで3枚を2枚にまとめたお買い得盤が出ている。

chateaux5
FIGHT TO THE LAST : THE ANTHOLOGY


デビューシングルの2曲も収録されていて嬉しい。
ちなみにこの2曲はスティーヴではなく、Bのアレックス・ホウストンが歌っていた。CHATEAUXで歌う3人のVoは似てるなぁ、だから全作通して聴いてもしっかり統一感があってVoが違うのに違和感が一切ない。
すでに高値になって入手が難しくなっていると思ったら今月バラで再発されるようだ。各500枚限定らしいから欲しい人はお早めに。10枚ぐらいしか売れんような気もするが。



“Highly Strung”


”First Strike”


“Rock And Roll Thunder”


“Street Angel”


“Phalanx”


Fight to the Last/Chateaux

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Chained & Desperate/Chateaux

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