歯抜けになってた2ndをようやく入手したからメタネタでやる。当時のメタル者は「にひゃくにじゅうボルト」とそのまま呼んでいたが、実際の読みは「Two Twenty VOLT」。


220 VOLT


79年にスウェーデン、エステルスンドで結成された5人組。マッツ・カールソンとトーマス・ドレヴィンの2人のギタリストを中心にメンバーチェンジを繰り返した後、82年にシングルをレコーディング、これが各国で話題になる。
好機と見たバンドは、このシングルの2曲に3曲を加えたデモテープを各レコード会社に送った。するとスウェーデン本国のCBSから返事があり、いきなりのメジャー契約を手にすることになる。
83年の1stアルバム。

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220 VOLT


後に日本でも北欧メタルが注目されるのだが、まだこのころは全然だった。実際この時代にも多くのバンドはいた、でもそれを知る術がない、まだまだ遠い辺境の地であった北欧のメタルバンドや北欧メタルシーンを知る者は日本にほとんどいなかった。北欧の状況を日本のメタルマニアが知るのはもっと後になってから、野心に燃える若き日のイングヴェイやEUROPE、あるいは無数にいたマイナーバンド群が知られるのは。

そんな時代にこの220 VOLTのデビューアルバムは日本発売もされている。全く知らなかった。まだB!誌も創刊されていなかったから知りようがない。
だから買ったのは10年以上の時を経た再発CD、なんせ初めて買った220 VOLTのアルバムは3rdだったから。

一般的にイメージする北欧メタル、美旋律なイメージには遠いNWOBHM直系の音。まだリフで押すTORCHとかそっちのタイプに近い、でも後の北欧メタルに通ずるようなメロディの冴えが各所に出てきて、北欧メタル好きの神経の末端を微妙に刺激するだろう。
NWOBHM型とパープル/RAINBOW型の中間ぐらいの感じかな?ラストの “Woman In White” はRAINBOW丸出し。
いずれにせよメロディ云々より、まだまだイモさの方が際立っている。
シングルのころからVoが替わっているらしいが、そんなレアなシングル入手出来る訳ないからあまり関係ない。

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84年の2ndをやっと入手。30年の時を超えて。


POWER GAMES


なんでか知らんけど1st再発したくせに、この2ndは再発されなかった。84年の当時も日本発売は見送られたらしいし。ブートくさいのが出てた記憶もあるが、買うには至らなかった。
で、やっと見つけた。これが4000円だの5000円だったら買わない。1080円だったから買った。

雑さや薄っぺらさばかりが目立った1stに比べ、ようやくメジャーバンドとしての最低レベルの品質を提示出来たように思う。音質を含め全体的に深みや奥行きが出た。
目指している路線自体は変わらない、NWOBHMの北欧風味なのは変わらない、なのに1stのレベルが低すぎたせいか大きなレベルアップを果たしていると感じる。もともと良い物は持っていた、それを上手くアレンジし上手にレコーディングする術を手に入れた、そんな気がする。
甘くなりすぎない北欧のメロディがさりげなく、しかし効果的に耳を捉える。彼らの個性の最初のきらめきを見せる3曲目の “Over The Top”、この曲は彼らの未来に続く曲だ。続く “Night Without End” やB面の “Mistreated Eyes” なども、荒さと繊細さが化学反応を起こす寸前であることが分かる。

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85年の3rd。


MIND OVER MUSCLE


だんだん北欧メタルが盛り上がってきたころだからこれは日本盤が出た。もともとCBS所属のメジャーバンドなんだから出てもおかしくない。
この青いジャケに惹かれた。当時レコード屋でこれと「KILL ‘EM ALL」どっちにしようか迷って、こっち買ったことを覚えている。「KILL ‘EM ALL」はゴミ臭が強すぎたからだ。

前作で光を放ちつつあった彼らの魅力は、このアルバムで見事に炸裂する。オープニングの “The Tower” は北欧メタル史に残る名曲。他にも “Electric Messengers” や “Halloween” など優れた曲が多数収録、今聴いても十分興奮出来る。
他のアルバムも甲乙つけがたいが、思い入れの部分で220 VOLT、No.1アルバム。ただしA面ラストB面ラストにそれぞれしょうもない曲が入ってる。この2曲は好きになれんかった。

当時、EUROPEやTREATなどの活躍で、日本でも北欧のバンドが注目されつつあった。北欧メタルが美旋律なイメージで確立される。このころかな、220 VOLTも北欧メタルの1バンドとして日本でも認知されるようになるのは。
確かB!の北欧特集で編集長直々にスウェーデンへ直撃取材に行ったのを覚えている。そのときにこの220 VOLTにも会って取材されて、謎のバンドであった220 VOLTがどんなバンドなのか、ようやく日本のメタル者が知ることが出来たのだと思う。

88年の4thアルバム。

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EYE TO EYE


ここで大きく路線を変える。パワーメタル寄りの正統派北欧メタルだった今までの音楽性からメロディ重視のハードロックへと変化、LAメタルなどの当時のメインストリームに接近、他の成功した北欧バンド同様アメリカを狙い始めた。
プロデューサー及びエンジニア、ミックスも含め、オジーやLOUDNESSなどを手掛けたことで名を知られるマックス・ノーマンが担当してアメリカレコーディングを敢行、非常に金をかけたアルバムで実際、彼らのキャリアで最も成功したアルバムとなった。

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今までのNWOBHM寄りの荒々しいパワーメタル路線から一転、全体的に当たりの柔らかい印象、曲によってはAOR風になったとさえ思える。
個人的には少々がっかりしたアルバムであったが、メジャークラスとしてのプロフェッショナルさは今までと桁違い、曲自体の完成度も高く本場アメリカの一流バンドに引けを取らない220 VOLT史上最も強いメジャー感を楽しみたければ、この4thを勧める。
ただし北欧独特の美旋律とか冷気とか、肝心な部分が大きく失われているのが気になる。

バンド最大の成功を得るも総合的にアメリカ進出は失敗に終わり、以降220 VOLTのニュースを聞くことはなくなった。このころ起こるロックシーンの大きな変化も影響したのかもしれない。92年に解散。
何人かのメンバーがこの後、VOLTERGEISTの名で短期間活動していたことを調べて知った。

97年に突如新作が発表される。4thに続くアルバムとしてレコーディングされたものらしい、バンドはすでになかったが、通算5thアルバム。

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LETHAL ILLUSION


あんまり聴いてなかったからそんなこと忘れていたが、そういやここに貴重なデビューシングルの2曲が収録されてるんだった。その2曲以外は前作で見せた路線、あんまり北欧を感じないアメリカンな音楽性、3rd以降のEUROPEと似たような印象。質は高いが、もはや初期のNWOBHM風のメタリックでパワフルな要素は望めない。このアルバムの価値はCD化されたシングル曲にある。

再び音沙汰はなくなり220 VOLTのことなどすっかり忘れ去られてしまった現在、どうやら再結成したらしくて2014年に「WALKING IN STARLIGHT」というアルバムを出している。後期の路線を考えるとあまり興味が湧かない。

こんなのもあった。
84年に出たクリスマスシングル。


HEAVY CHRISTMAS


オリジナルは84年?これは87年に出たらしい12インチシングル。しかもプロモ盤らしくてジャケがない。
この曲はクリスマス企画物ということで、フォーマットを変えて何度も再発売されている。


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LOVE IS ALL YOU NEED


「EYE TO EYE」アルバムからのシングル。
PVも製作されたこのバラードをパワープッシュしてアメリカを攻めていた。ビルボードのチャートを賑わせたLAポップメタルバンドのバラードよりずっと良いと思うが、残念ながらルックス面で大きく負けている。



“The Tower”


“Electric Messengers”


“Beat Of A Heart”


“Over The Top”


“Mistreated Eyes”


“Night Without End”


“Child Of The Night”


“Woman In White”


“Prisoner Of War”


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