ここで触れたもう一つのSAIGON。
クサレ者なら大概持ってる有名アルバム。
EBONYのサブレーベルであるCRIMINAL RESPONSEからの発売、EBONY専属画家ゲイリー・シャープによる良ジャケと、音以前に買うべき要素が揃っている。


SAIGON


スウェーデン、セーデルハムン出身の5人組。ソーデルハムン(Söderhamn)で調べてたら関連でイケアのソファがたくさん出てきたが、そういやイケアはスウェーデンの家具屋だったな。85年、唯一の作。


ONE MUST DIE


ゲイリー・シャープ・ヤングらしい絵ではあるが、彼の他の名作を知っている者からすると少々雑な印象もある。もっと緻密に描かれた素晴らしいジャケを数多く見てきたから。大量生産されるEBONYの締め切りに追われていたのかもしれない。知らんけど。
これがゲイリー・シャープ印。
彼が描いたジャケにはこの印がある。

saigon2


年代的に予想通りの、スウェーデンとか北欧メタルのイメージである美旋律なタイプとは違う、まだまだどんくさかった時代の北欧メタル、NWOBHM直系のリフで押すタイプのパワーメタル型。TORCHとか初期220 VOLTなんかが即座に頭に浮かぶ。
いきなりミドルテンポの曲で始まり、疾走感よりもヘヴィさを重要視しているとの印象、スピードでごまかさない分、確実なテクニックと曲の良さが要求されるが、しっかりと落ち着いた曲調やツインのギターソロのメロディなどにマイナーメタル特有の味わい深さを感じる。
音質の悪さは当たり前のことだから特に気にもしない。通は逆にこのもやっとした感じが必要であるとさえ思う。

そして似たようなのったりしたテンポに飽きてきたころ、B面トップに待ちに待ったスピードロックが炸裂、この我慢してたものが解放される感じが嬉しい。ギターソロがカッコよすぎて悶える。いっぱいいっぱいでうわずるタイプのヘタウマボーカルもこの手のバンドには必須要素。好き者には全ての要素がストライクゾーンに入ってきてニヤニヤが止まらなくなるだろう。マイナーメタル好き、クサレメタル好きは必聴必携盤。そして当然のごとく一般的にはゴミ同然の単なるイモメタル。

saigon3

美旋律以前のこのタイプの北欧バンドも好きだった。
余分なものがなにもない、当然売れる要素もなにもない、キャッチーさのかけらもない良くも悪くもピュアなメタル、こんなの売れるわけないよ。本来メタルは絶対一般受けしないもんなんだから。普通の人は眉をひそめたり、嫌そうな顔するのが普通だったんだよ。眉をひそメタル。



"And One Must Die"


“Live For Today”


“The Hunted One”