前回名前が出たからこれもやる。


COLD SWEAT


KEELを脱退したマーク・フェラーリが結成したバンド。当初は自身の名を冠してバンド名はFERRARIとなっていた。
KEELでの実績があったおかげかマネージメントをロニー・ジェイムズ・ディオの妻であるウェンディ・ディオのNIJI MANAGEMENT、レコード会社はMCAとそれぞれ契約、超メジャー待遇のデビューとなった。
しかしそのまま順調にデビューというわけには行かず、メンバーチェンジなど様々な障害に突き当たることになる。
まずベーシストが脱退、続いてVoのオニー・ローガンがジョージ・リンチのLYNCH MOBに引き抜かれてレコーディングが止まってしまうという災難に見舞われる。オーディションの末、新人のローリー・キャーシーが迎えられレコーディングが再開するが、今度はバンド名のFERRARIが問題となりバンド名の変更を余儀なくされる。彼らの曲にあったCRYIN’ SHAMEに変更したがあまり気に入らず、結局マーク自身も強い影響を受けたTHIN LIZZYの名曲からCOLD SWEATに落ち着いた。

88年のKEEL脱退から2年の年月を経て90年、ようやく出たデビューアルバム。

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BREAK OUT


グランジ/オルタナ全盛期にはもはや異質とも思える王道の超正統派アメリカンハードロック、もうこれは時代が悪かったとしか言えない、こういうバンドが活躍できない、評価されない、アルバム一枚で消滅してしまう、あれはまさに暗黒の時代であったと思わざるを得ない。嫌いな呼び方だが所謂ヘアメタル、80年代中期のHR/HM全盛期のゴージャスなアリーナロック、メロディアスなアメリカンロック好きは必聴必携アルバム。
DOKKENやGREAT WHITEが見事に体現したアメリカとヨーロッパの融合、完璧な豪と柔のバランスがこのバンドにもある。ポップとかメタルとかそんなことどうでもいい、良い曲を作ろうという熱意が伝わってくるからだ。

レーシングカーのSEに導かれ Kick Assな “Four On The Floor” がバックファイアーを上げてスタート、伝統的なHR/HMの激しさと疾走感、キャッチーなメロディが絶妙に合わさり、そこにやや乾いた声のローリーのVoがアメリカンな色をつける。この最高のオープニングで完全に聴き手を引き込むことに成功、続く曲も派手さや個性には少々乏しいものの実直でフックある良曲が連発、長年メジャークラスのLAメタルを聴いてきた者なら十分納得の一枚。
特に耳を惹いたのが5曲目の “Take This Heart Of Mine”、寂しく切ないメロディが激しく胸を打つ。北欧メタルにも通ずる透明感のある悲しみに満ちたメロディ、この曲がなくても十分優れたアルバムなのに、こういう殺人レベルの曲が突然飛び出してくるから油断できん。正直捨て曲もあるがこんな曲があったら他の曲全部捨て曲でも構わん。これだけで十分元取れる。

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マークは当時の流行の速弾き系のギタリストとは違い、KEELでコンビを組んでいたブライアン・ジェイとは対照的なやや古いタイプのギタリストであったように思う。シェンカーやゲイリー、あるいはバンド名にもなったTHIN LIZZYのジョン・サイクスのようなヨーロッパな感性を持ったギタリストであったのではないかと、KEEL時代からそのシンプルながらもメロディアスなフレーズを弾く彼のギターを聴き、そういう印象を持っていた。だからこのアルバムもアメリカンでありながら、ギリギリのところでそういう部分が残っているのが嬉しい。
ギタリストとしての腕も確かながら、彼は作曲面での能力も非常に高かったであろうことが伺える。ギターソロよりもトータルとしての良い曲を目指していたような。

Voを取られたジョージ・リンチのLYNCH MOBと反対、ギタリストとしては神レベルのジョージだが、LYNCH MOBは曲がつまらない印象があったから。
それぞれ自身のバンドを結成時にVoを取り合うという因縁のあった2人、彼らにはそんな違いを感じる。
一枚で消滅したCOLD SWEATに対しバンドとして成功したのはLYNCH MOBかもしれないが、よく聴いていたのはこっち。DOKKENは最高に好きだけど、LYNCH MOBはあんまり好きじゃないんだよ。



“Four On The Floor”


“Take This Heart Of Mine”


“Jump The Gun”


Break Out/Cold Sweat

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