ギリシャ神話のミダス。触れるもの全てを金に換えることが出来る、それがミダスタッチ、ミダースタッチ、あるいはマイダスタッチともいう。この言葉を知ったのはSAXONにそんな曲があったから。
こんな名前のバンドもあった。


MIDAS TOUCH


スウェーデンのウプサラで結成された5人組。
87年にデモを制作した後NOISEと契約、唯一のアルバムを89年に発表する。


PRESAGE OF DISASTER


バカの音楽であったスラッシュメタルが知性を身につけ、やたらテクニカルになっていった時期があった。その始祖はやはりMEGADETHになるのであろうが、スラッシュメタルのクロスオーヴァー化が行くところまで行き、本来の破壊力や疾走感が無視され、もはやなにをやっているか分からないようなバンドが多産されるようになってきていた。
もともと基本的に破壊力のみの一極集中型の音楽であったスラッシュメタル、それがいろんな方向に向いていくのは必然ではあったが、短い期間で「これは違う」と思わせられるようなバンドが多くなっていったのも事実。これはどんなジャンルでも言える。やってる本人だけが気持ちいい音楽ではダメ。その点、このMIDAS TOUCHはまだスラッシュメタルとしての美学を保っていた。
非常にテクニカル、それがやりたいことに技術が伴っていたかどうかはともかく異常に聴きづらい音楽だと思ったにも関わらず、このアルバムを愛聴していた。METALLICAやMEGADETHを進化させた血の騒ぐスラッシュメタルとして十分楽しめたからだ。

アルバム全体に満ちる殺気。この緊張感は異常。SE多用しイントロから一気に聴き手を引き込み、全身硬直状態のまま最後まで聴かせる。それが出来るのは何故か?退屈じゃないから。呼吸するのも忘れるぐらいのフックがあるから。ただ激しく演ればいい、あるいは逆に凝ったことをやっているだけで全くフックのないような連中は、こういうバンドを見習うべき。特に最近のデスメタルやプログレ系シンフォニック系。
どんなに高度でもつまらなくては意味がない。もちろんそれは個人的な好みに大きく左右されることでもあるのだが。

久しぶりに聴いて当時と変わらず興奮した。やたら難解でややこしい音楽ではあるが、ここにはスラッシュメタルの原始的な衝動も間違いなく感じられる。テクニカルなスラッシュとしての興奮度は腑抜けた時代のMEGADETHを大きく上回っていると思える。テクニカルすぎてなんだかよく分からない音楽になってしまうスラッシュメタルがギリギリで踏みとどまったような、そんなアルバム。不愉快さと興奮を同時に味わいたければ必聴。

midas touch2

スラッシャーにでさえあまり知られていないようなこの名作を残しバンドは消滅。
VoとGが93年にMISERY LOVES CO.というバンドを始めている。MIDAS TOUCHが大好きだったからそのデビューアルバムも一応買ったが、どんなんだったか全く覚えてない。



"Forcibly Incarcerated"


"True Believers"


"Aceldama/Terminal Breath"


Presage of Disaster/Midas Touch

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