世界各国のアクロバットチーム、アメリカ海軍のブルー・エンジェルス、空軍のサンダーバーズ、日本にも有名なブルー・インパルスがある。イギリスにもあるしフランス、スウェーデン、スペイン、確か中国や韓国にもアクロチームはあったはず。
特に高度な技術を持っていると言われたイタリア空軍のフィレッツェ・トリコローリ、1988年8月、当時西ドイツのラムシュタイン空軍基地(確か在欧アメリカ軍基地、RAMMSTEINのバンド名はここから来ている)で行われた航空ショーで曲技中、接触事故を起こし墜落、観客を巻き込む大惨事となった。
その瞬間の映像をジャケ画に使ったバンドがあった。
EMBARGO
ドイツ、フュルトで87年に結成された4人組。
数回のメンバーチェンジを経て、マーカス・ワグナー(G&Vo)、ステファン・ダニエル(G)、ピーター・ブロンザック(B&Back Vo)、クリスチャン・ザウバー(Dr)の4人に固まる。結成当時はBOURBONと言うバンド名だった。
ライブをこなしつつデモテープを数本制作した後、92年にD&S RECORDSと契約、93年デビュー。
PANEM ET CIRCENSES
音楽性は簡単に言えばHELLOWEEN以降のドイツに大量に現れたメロディックパワーメタルの一派、スピード感はあるがスラッシュメタルほど激しくはなく、激しさよりもなだらかなメロディが耳に残り、とても聴きやすい。
しかもこれがまたどの曲も良くて、おちゃらけた感じや子供っぽい感じがなくシリアスなイメージがあるのもいい。
歌詞の内容がHELLOWEEN系メロスピに多いファンタジーな夢物語と違い、社会的な内容が多いのがバンドの雰囲気をよりシリアスなものにしている。
マーカスの弱々しい声も細く声域も狭い(はっきり言って下手)、しかしその弱々しさが曲の悲壮感を一層盛り上げていると思える。演奏力も高い。
最後まで全く退屈することなく聴ける、しかもそのラストのジャケに関連した7分半にも及ぶ大曲 "High In The Sky" が最高すぎて悶える。
テイチクのメタルマニアレーベルからちゃんと日本盤が出ていた。
94年の2nd。
CHILDREN OF A LESSER GOD
路線は変わらず。メンバーも同じ。曲の質がやや下がったような気がする。悪くはないが全体的にメロディの扇情力が落ちている。そのせいか日本発売はなかった。
でもEMBARGOらしさを十分感じることはでき、部分部分ではとても良いメロディがある。ラストの "Flatline" は彼ららしいメロディが炸裂する名曲。
97年の3rd。
このレベルのバンドが3年も間を空けるのは致命的。
すっかり忘れていたころに出たアルバム。
THE RED TIDE
タイトルの「RED TIDE」とは赤潮のこと。
曲の良さが戻った。方向性にも全くブレがない。売れるために流行に乗ったりしない。グランジやオルタナティヴ風になったりはしなかった。
つまらん曲もあるが1曲目の "The Red Tide" を始め、"Find, Hit And Kill"、"My Battle"、"Mighty"、"Mary" など曲は粒ぞろい。特に3曲目の "Find, Hit And Kill" は泣きたくなるようなアコースティックイントロから急転直下、マーカスの情けないシャウトでスラッシーに突っ走る、激しくも物悲しいメロディがたまらない強力曲。彼らはアコースティックギターの使い方が上手い。ラストを締める "Mary" も切ないメロディを持った佳曲。この弱々しさがバンドの個性となっていたと思う。上手いことバランスが取れていた。弱さや切なさとメタルとのバランスが。
泣けるメロディを求めるなら必聴。
マーカスのヘナヘナ声ももはや個性となった。ツインリードのメロディも冴えている。ギターリフ自体はスラッシュメタルなところもあるのだが、音作りが軽いからあんまりそういう風には聴こえない。
とても良いアルバムだったがこの後情報を聞くことはなかった。そのまま自然消滅、調べたらやはり3rdの後解散してしまったようだ。
もう新作が聴けないと思うととても悲しかった。それぐらい深い思い入れがある。
"Yours Sincerely, Sirrah"
"Flatline"
"Find, Hit And Kill"
"Mary"
"High In The Sky"