古稀おじさん人生の並木道 -6ページ目

古稀おじさん人生の並木道

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【連載・第5回】「身内なら忖度しろ」――コーチが放った最低のヤジ
​――「情けなくて、顔が上げられなかった」

​大学4年生の春、リーグ戦。
前年のインカレで味わった悔しさを糧に、
私たちは再び優勝をかけた大一番を迎えていました。
相手は宿敵・中央大学。このセットを取れば優勝が決まるという、
極限の緊張感の中に私たちはいました。

​試合は一進一退の激戦となりました。
しかし、勝負を分けたのは、一本の不可解な判定でした。
相手のスパイクが明らかにコートの外へ外れたのですが、
副審が「ワンタッチ(ブロックが手に触れた)」と判定し、覆ったのです。
副審は他大学(明治)のOBでした。

​その瞬間、ベンチにいたHコーチから、耳を疑うような怒鳴り声が響きました。
​「おい、バレー界は身内同士(早慶明)で支えていくんだろ! 
なんで(早稲田に不利な)判定をするんだ!」
​私は耳を疑いました。

それは、審判に対して「伝統校同士の付き合いがあるんだから、
身内に有利な判定をして勝たせろ」と公衆の前で迫る言葉でした。
​私たちは、一球一球に魂を込め、正々堂々と戦って優勝を掴もうとしていました。
たとえ誤審であっても、それを「しがらみや付き合い」
の力でねじ伏せようとする指導者の姿に、私は激しい嫌悪感を覚えました。

​「バレー界は身内同士で支え合う」
――その言葉は、彼にとっての正義だったのかもしれません。
しかし、私にとっては、スポーツの清廉さを踏みにじる最低のヤジでした。
​優勝を逃した悲しみ以上に、自分のコーチがこれほどまでにバレーボールを、
そして必死に戦う選手を馬鹿にしていたという恥ずかしさ。私は情けなくて、
コートでしばらく顔を上げることができませんでした。

​この出来事が、私の心に最後の一線を引かせました。