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金融庁の基礎知識
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金融庁は10月に、毎年恒例の「金融レポート」を発表しました。上から目線で日本の金融機関にダメ出しをする、恐るべき文書です。
日経新聞では「地銀の経営改善の必要性を強調 金融庁がレポート公表」と報道されていましたが、見所はむしろ、証券会社(投資銀行業務ではなく、投資信託とかのリテール部門)の部分でしょう。業界でもひそかに?話題になっているようですが。
もうびっくり。延々20頁にわたって、最初から最後まで罵詈雑言。様々な数字を具体的に示しながら、いかに日本の証券会社(と、その親会社のメガバンク)がクソぞろいであり、まともな運用能力もないくせに、一般投資家から手数料をちょろまかすことだけにせっせと知恵をふりしぼっているので今すぐ死ね。そういう内容です。
しかもこのレポート、金融庁自らがQUICKやモーニングスターからデータを引っ張ってきて分析したという、超力作です。普通、お役所はそんな手間暇かけたことはやりません。シンクタンクのレポートを孫引きする程度です。
いやあ、森長官のぶち切れボイスが脳内再生されちゃいますね。
では結構長くなってしまうんですが、あまりにおもしろいので、詳しく見ていきましょう。
まず最初に、「日本の大型投信トップ10」の平均利回りは2.74%だったのに、米国では6.45%だったと、内角高めのビーンボールから入っていきます。日米で株価の動きは違いますから一概には比べられませんが、日本の証券会社の運用能力に疑問を投げかけてきます。
次に、日本の証券会社は「話題の分野に投資するテーマ型投信ばかり売っている」と、一般投資家に対する販売姿勢に注文を付けます。
テーマ型投信というのは、たとえば太陽光発電関連企業だとか、フィンテック関連株だとか、電気自動車関連だとか、とにかく話題のキーワードを取り上げて、それに関連する会社の株に投資する投信です。
言うまでもないことですが、投資っていうのは、話題になる前に買いこんで、ブームがピークを付けたときに売却することで儲ける、ってのがコツです。ブームになる前に有望株を発掘して客におすすめするのが、証券会社の専門家の仕事となる訳です。
ところが日本の証券会社は、ブームが過熱したところで、客に「今ブームですよ、買いましょう」とテーマ型投信を売りつける。だいたいの場合、そこをピークに、あとは値下がりするばかりです。
金融庁はわざわざ具体例として、「シェールガス関連投信」25本の値動きと販売状況を示して、いかにして一般投資家が損したかを説明しています。
お次は「販売手数料が高い」、です。2015年度は森長官の圧力で、各社とも手数料を引き下げましたが、16年度はまた上がったことが示されています。ザッケンナコラって感じですね。
証券会社が力を入れて販売している「ファンドラップ」についても、一般的なバランス型投信と実態は変わらないのに手数料だけバカ高い、と批判しています。
一般投資家への調査もやりました。一般投資家に「投資額100万円あたりで、1年間に平均してどれぐらい、証券会社に信託報酬(手数料)を払っていると思う?」と尋ねたところ、6割が「5000円ぐらいかそれ以下」、2割が「1万円~5000円ぐらい」と回答しました。
残念ながら正解は、「投資額100万円あたり平均で1万4000円」でした。証券会社は投信を売るとき、きちんと手数料の額を説明したのかよっていう疑問が、もりもりわいてきますね。
それにしても、わざわざそんな調査をするとは思わなかったよ。
証券会社が誇る精鋭頭脳・運用部隊についても「成果に見合わないカネを取っているゴミクズ」と批判しています。
金融庁調べでは、スタートから10年以上続いている長寿人気投信(アクティブ型281本)の運用実績(信託報酬を差し引いたあと)は平均利回りが年1.36%で、3分の1はマイナス利回りでした。日経225連動型のインデックス投信は年率2.37%で、それを上回った投信は、わずか3割しかありませんでした。
要するに、平均株価は毎年2.37%ずつ上がっているのに、証券会社の専門家に運用を頼んだら、高い手数料をふんだくられた結果(あるいはそもそも、ろくな運用結果が出なかったためか)、年1.36%しか増えなかった、ということです。いかんともしようがありません。
さらに、金融庁がごり押しで進めているNISAですが、NISA用に開発された積み立て投信は、証券会社がこれまで開発してきたその他の投信の平均と比べて、あらゆる分野で高い運用利回りをたたき出している、と、わざわざ計算して説明してくれます。本当に粘着質です。
さらに、大手証券会社やメガバンクが子会社の運用会社に作らせた投信は、とりわけクソである、と強調しています。
同庁の集計によると、2014年度に設定された、そういったタイプの投信182本の平均利回り(手数料等差し引き後)はマイナス1.5%でした。しかも、これらの投信の多くは「プロの機関投資家も回避する、リスクの高い商品であると考えられる」と、けちょんけちょんです。
その一方で、腐りきった大手証券会社やメガバンクとは一線を画した、清々しい理想に満ちている独立系運用会社は平均で年9.0%のリターンを出していると、お褒めの言葉に預かっています。
さらにNISA批判に対しても反論します。
経済専門誌などでは最近、「金融庁が勝手な思いこみで作ったNISAは条件が厳しすぎて、証券会社としては全くメリットのない商品しか売ることができない。一般投資家のニーズに応えているのかどうかも疑問だ。役に立たない制度なのではないか」というような見方が載せられています。
ところが、これまた金融庁が日米の人気ベスト10投信(純資産総額)を自ら調べてみたところ、米国では10本中8本がNISAの条件を満たしていて、今すぐNISAで販売できるのに対し、日本のトップ10でNISAの条件を満たしていたのは「存在しなかった」ということです。
つまり、金融庁が証券業界に、「アメリカで人気の投信みたいなやつを日本でも販売してくれ」と頼んだら、「そんな投信では、いままでのように楽して一般投資家のカネをちょろまかせません」とブーブー不満の声が出たので、森長官がブチ切れた、という構図が判明したのです!
まあ、こんな感じ。要するに、日本の証券会社(とか、その親会社のメガバンク)は顧客本位の姿勢がまるでない、という結論になるわけです。

