今こそ胸を張れ | 「避難所ウォ-カー」

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…   東日本大震災・ボランティア活動体験記

体育館からの帰途、僕の足取りは重かった。


そうか、いよいよ参加希望者ゼロか。仕方ない。いつまでもニーズがあるわけではない。しかし、思いのほかあっという間に飽きられてしまったな。それとも最初からニーズなんかなくて、皆さん物珍しさで参加してくれただけだったのかな。


せっかく学生ボランティア本部から協力してもらってるのに、ボランティア募集広報も中止してもらわないとな。参加希望者がゼロなのに、ボランティアスタッフばかり集めても仕方がないし、学生の方も、またキャンセルされても困るしな。


ネガティブな方へ方へと傾く気分を変えるため、途中から信濃川沿いの遊歩道に出て歩くことにした。大河信濃川の流れに、心を癒やしてもらおうと考えたのだ。

それが効果を奏したばかりでもないのだろうが、たしかに僕は考えを変えることができた。


そうだ、今こそ胸を張らなくては。

希望者ゼロということは、避難者の人たちも周辺の地理に明るくなり、自分達で活動できるのだということ。それはそれで活動の実績ということではないか。それこそが、成果なのではないか。


取り組んできた活動が、成果を挙げた結果としての、希望者ゼロなのだ。

うん、今こそ胸を張るべきなのだ。


無理して心を奮い立たせ、頭を上げると、前方に立つ新潟県の行政庁舎が目に入った。

この日は土曜日、通常であれば閉庁日であるが、災害関連でおそらく大勢の職員が出勤し、業務に当たっているであろうことが想像された。

少なくとも、防災関係部署の職員は、24時間体制で勤務に当たっていることだろう。


その中でも、かつての上司に当たるある方のことが、ふと思い浮かんだ。

その方はYさんといい、新潟県の防災関係部署で管理職を務めている方だったが、その昔、国際交流関連業務を行う部署に在籍され、当時同じ部署に在籍した僕に、さまざまな業務を指導してくださった方だった。


Yさんはきっと、発災以来ずっと休みもなく働いてるのだろうなあ。そんな風に考えながら歩いていたとき、唐突に啓示が訪れた。

思わず足を止めた背中を、戦慄のような感覚が走り、僕は声に出して呟いていた。


「そうか・・・ホスピタリティなんだ・・・」


(つづく)