前回より続き)
公立病院に4年間勤め、やはり音楽は学生時代とちがい趣味程度の活動範囲と結果に終わった。
結局仲間と呼べる人も広くなるどころか、寧ろ必要最小限に淘汰・限定されていった。
残された音楽への夢のための時間は、「詐欺まがいの音楽事務所」に所属したことにより得た経験と反省を経て、まだ繋がりを持つ「ロシアンルーレット」時代から付き合いのあるギタリスト・田口など数人とで、もうマイペースでやれればいい。
実家から離れ、第二の故郷となった埼玉・北越谷では大学や所属していた軽音サークルの遠い後輩と縁があり、次の職場や音楽喫茶のような店と不思議につながり始めた。
着々といろいろ準備が整えた。
「今持てるものでも、充分勝負できるじゃん」
さて、次の看護師の仕事は「精神科」
紹介してくれた後輩は夜勤介護のバイトをしていた。
合う合わないかより、定時に退勤できるのが何より魅力的だった。
サービス残業が当然の地獄のような一般病院から一変の環境。
正直気が抜けてしまい、生ぬるく感じ、服装も基本自由で周りは良い人たちばかりだっただけに「わざわざ積極的になることもなかろう」と甘えてしまい、少なからず舐めた態度に写ってしまった部分もあった。
音楽活動も、カフェやバーでの弾き語りイベントで對馬や福田という男たち、若いながら大学サークルレベル以上に意志や展望がある連中と知り合えた。
そして、念願のバックバンドメンバーを携えて越谷イージー・ゴーイングスや西川口ハーツなどイベントに出られるつながりを持てていたことに感激したが、描く理想や結果にはまだ程遠かった。
さぁ、目的や時間ができ、方法論が確立した途端…
お金がみるみる先立っていった。
公務員としての退職金もあっという間に飲み代に無くなっていく。
それにソロはバンドよりコストがかかった。
レコーディングはケチって自主制作で宅録レベルだったが、インディーズ・レーベル主催のコンピレーション企画に参加したりした。
更にSNS映えを気にしたり宣伝活動とかこつけて、無理して身の丈に合わない飲食したり、調子に乗って風俗通いやギャンブルとまではいかないが、「女と金の匂いを漂わせること」に必死だった。
ファンなどつくわけないはずだ!
三十路で独身にしていまだ自転車操業。
神が用意してくれたシチュエーションをもってしても私はまたも境地に立たされた。
しかし飲み代だけは1日二千円はキープしていた。
飲み屋、バー、ナイトカフェ…どこかしらに出没し、金を落とす必要があった。
地元でまず顔を売り、「会いに行けるロッカー」を掲げていた。
飲み足りなければコンビニでサンガリアのチューハイを購入。
コツコツ地道な努力もせず、不安と焦燥に打ち勝つために、肝臓を犠牲にして…
〜そんな時期に、宗教劇時代に知り合った友人から誘われたのが…
渋谷にデカデカとロゴ・マークをなびかせ日本支社ビルを聳え立たせていた「A」の販売ビジネスの話だった。
彼は、私と感性似ていた。
まず、オタク気質。彼はアニメ好きが高じて、声優やナレーション、パーソナリティなどの生業を志していた。
専門学校や養成所に通うことはなかったようだが、外国語や経営経済学で名を馳せる、かの「D」大学を出ていた。
そこでスピーチ・コンテストか何かで成果を出すほどの活動をしていたが、隠キャでいまいち垢抜けず、野心と純心のペルソナを自在に使い分けられる社会的経験の絶対的な欠乏が露呈していた。
そこが強く私と共鳴していた。
思えば「ロシアンルーレット」時代、集客が伸び止んだ時、ベーシストの樋山がバンドメンバーに持ち出した、この手の副業ビジネス…
バンドの雰囲気は最悪になり、数ヶ月後にはこの件がきっかけでボーカルが呆れて脱退した。
…
いちど話を聞いてから、断ろう
……
商品を実際試してから、断ろう
その間、ネズミの親玉である彼のピラミッド・カースト上位の人物のトーク・ライブ・ショウなるものに誘われた。
「拓也くんも、ダイヤモンド・ディストリビューターのKさんのグループだからこういうイベント会場に入れるんだよ!普通はチケット代払うもんだよ!」
確かに、渋谷クアトロ。よく行っていたライブ・ハウスだったのでプライベートで貸し切れるKとやらの財力に素直に感心した。
ピラミッドの頂点にいるらしいKという中年の方は、小太りでハリウッド・スターのような私服でボンジョヴィの名曲を熱唱。
「拓也くん。ボンジョヴィだって、キムタクだってアユだってガクトだって、Aの愛好家なんだよ!
Kさんのバックメンバーの人たちもAで成功してるんだよ!」
「…へぇ。。」
確かにボンジョヴィのポスターは本社ビルに貼ってあった。
広告塔…か
この言葉は
音楽事務所詐欺の件でも、まんまと釣られたのだが
くぅ…世界のボンジョヴィかよ〜。。
それ持ち出されたら私は…
とはいえシャンプーと歯磨き粉も、特段使い心地は…
市販のそれと正直変わらない。
石鹸で洗髪、塩で歯磨きするのに何の抵抗が無い私にとっては、なんの説得力無い。
化粧品は知らんが、、
本当に芸能人も使ってるのかね?
「使い続けると違うよ!」
…何が?
市販のは皮膚がんにでもなんのか?
だてにメリットやナイーブ売れ続けてねーわ。
「原料や素材が良い。環境に優しい。芸能人のような意識の高い人たちだから、ね」
うーむ。。
意識高いなら社会のために働けばいいのでは…
不労所得で好きなことだけやって生きることで、果たして「魂」は磨かれるのだろうか?
幾多の底辺の販売員を洗脳し続けるダイヤモンドナニガシはまさにLivin' on A prayer?
私にはドン小西にしか…
翌る日。
優秀な上位女性販売員の自宅に夕食に招かれ、フライパンや油や浄水器の良さを散々宣伝された。
「何だこの新しいソフト風俗は?」という感覚になり、まんまと浄水器を分割購入した私のことを、どうぞ笑ってくれて構わない。
確かにその人は美魔女だった。
説得力あるセールスにまんまと…
しかし、本来の卸や小売にかかるマージンが、販売員としての売り上げ…このシステムだと商品のクウォリティは、やはりマツキヨと大して変わらないという事だ。
ということは、美魔女は影で努力していたのだ。
「結局、何使おうが変わらない…か」
その事実が私にそれ以上の購入を抑止した、という皮肉な結果になった。
…結局また、女とカネに、私の夢と時間はA自慢の洗剤の如く強引に研磨されていった。
2016年。
ソロ・シンガーとして越谷や川口、上野でそれぞれ数本のライブを経て、自主制作音源を作り(頑張ったが音質的に、デモ曲レベルになってしまった)…
例の音楽事務所やAにより友人を失ってしまった33歳の私は「歌」を基礎からプロに学ぼうと、またまたバンド、ライブというものを一旦リセットした。
実質「リタイア」だった。
それは…
その年の6月、ふと2012年、筑波山デートで大失恋した彼女と某SNSでダイレクト・メッセージを送った。
かろうじてブロックは、されてなかった!
私はこの数年、できる範囲で遊んだ女性たちではやはり満足が得られなかった!!
「…あの、中島卓偉のCDまだ貸したままだったよね?時間あったら、お茶でもどう?」
というオジサン構文を酔いながら半ばヤケクソに送った。
翌日…返事がきた。
「お久しぶりです。
あ、そうですね!お返しします。
いつ時間ありますか?
私は今、いろいろあってシングルマザーしてます」
…⁈⁈⁈⁈
続く)
公立病院に4年間勤め、やはり音楽は学生時代とちがい趣味程度の活動範囲と結果に終わった。
結局仲間と呼べる人も広くなるどころか、寧ろ必要最小限に淘汰・限定されていった。
残された音楽への夢のための時間は、「詐欺まがいの音楽事務所」に所属したことにより得た経験と反省を経て、まだ繋がりを持つ「ロシアンルーレット」時代から付き合いのあるギタリスト・田口など数人とで、もうマイペースでやれればいい。
実家から離れ、第二の故郷となった埼玉・北越谷では大学や所属していた軽音サークルの遠い後輩と縁があり、次の職場や音楽喫茶のような店と不思議につながり始めた。
着々といろいろ準備が整えた。
「今持てるものでも、充分勝負できるじゃん」
さて、次の看護師の仕事は「精神科」
紹介してくれた後輩は夜勤介護のバイトをしていた。
合う合わないかより、定時に退勤できるのが何より魅力的だった。
サービス残業が当然の地獄のような一般病院から一変の環境。
正直気が抜けてしまい、生ぬるく感じ、服装も基本自由で周りは良い人たちばかりだっただけに「わざわざ積極的になることもなかろう」と甘えてしまい、少なからず舐めた態度に写ってしまった部分もあった。
音楽活動も、カフェやバーでの弾き語りイベントで對馬や福田という男たち、若いながら大学サークルレベル以上に意志や展望がある連中と知り合えた。
そして、念願のバックバンドメンバーを携えて越谷イージー・ゴーイングスや西川口ハーツなどイベントに出られるつながりを持てていたことに感激したが、描く理想や結果にはまだ程遠かった。
さぁ、目的や時間ができ、方法論が確立した途端…
お金がみるみる先立っていった。
公務員としての退職金もあっという間に飲み代に無くなっていく。
それにソロはバンドよりコストがかかった。
レコーディングはケチって自主制作で宅録レベルだったが、インディーズ・レーベル主催のコンピレーション企画に参加したりした。
更にSNS映えを気にしたり宣伝活動とかこつけて、無理して身の丈に合わない飲食したり、調子に乗って風俗通いやギャンブルとまではいかないが、「女と金の匂いを漂わせること」に必死だった。
ファンなどつくわけないはずだ!
三十路で独身にしていまだ自転車操業。
神が用意してくれたシチュエーションをもってしても私はまたも境地に立たされた。
しかし飲み代だけは1日二千円はキープしていた。
飲み屋、バー、ナイトカフェ…どこかしらに出没し、金を落とす必要があった。
地元でまず顔を売り、「会いに行けるロッカー」を掲げていた。
飲み足りなければコンビニでサンガリアのチューハイを購入。
コツコツ地道な努力もせず、不安と焦燥に打ち勝つために、肝臓を犠牲にして…
〜そんな時期に、宗教劇時代に知り合った友人から誘われたのが…
渋谷にデカデカとロゴ・マークをなびかせ日本支社ビルを聳え立たせていた「A」の販売ビジネスの話だった。
彼は、私と感性似ていた。
まず、オタク気質。彼はアニメ好きが高じて、声優やナレーション、パーソナリティなどの生業を志していた。
専門学校や養成所に通うことはなかったようだが、外国語や経営経済学で名を馳せる、かの「D」大学を出ていた。
そこでスピーチ・コンテストか何かで成果を出すほどの活動をしていたが、隠キャでいまいち垢抜けず、野心と純心のペルソナを自在に使い分けられる社会的経験の絶対的な欠乏が露呈していた。
そこが強く私と共鳴していた。
思えば「ロシアンルーレット」時代、集客が伸び止んだ時、ベーシストの樋山がバンドメンバーに持ち出した、この手の副業ビジネス…
バンドの雰囲気は最悪になり、数ヶ月後にはこの件がきっかけでボーカルが呆れて脱退した。
…
いちど話を聞いてから、断ろう
……
商品を実際試してから、断ろう
その間、ネズミの親玉である彼のピラミッド・カースト上位の人物のトーク・ライブ・ショウなるものに誘われた。
「拓也くんも、ダイヤモンド・ディストリビューターのKさんのグループだからこういうイベント会場に入れるんだよ!普通はチケット代払うもんだよ!」
確かに、渋谷クアトロ。よく行っていたライブ・ハウスだったのでプライベートで貸し切れるKとやらの財力に素直に感心した。
ピラミッドの頂点にいるらしいKという中年の方は、小太りでハリウッド・スターのような私服でボンジョヴィの名曲を熱唱。
「拓也くん。ボンジョヴィだって、キムタクだってアユだってガクトだって、Aの愛好家なんだよ!
Kさんのバックメンバーの人たちもAで成功してるんだよ!」
「…へぇ。。」
確かにボンジョヴィのポスターは本社ビルに貼ってあった。
広告塔…か
この言葉は
音楽事務所詐欺の件でも、まんまと釣られたのだが
くぅ…世界のボンジョヴィかよ〜。。
それ持ち出されたら私は…
とはいえシャンプーと歯磨き粉も、特段使い心地は…
市販のそれと正直変わらない。
石鹸で洗髪、塩で歯磨きするのに何の抵抗が無い私にとっては、なんの説得力無い。
化粧品は知らんが、、
本当に芸能人も使ってるのかね?
「使い続けると違うよ!」
…何が?
市販のは皮膚がんにでもなんのか?
だてにメリットやナイーブ売れ続けてねーわ。
「原料や素材が良い。環境に優しい。芸能人のような意識の高い人たちだから、ね」
うーむ。。
意識高いなら社会のために働けばいいのでは…
不労所得で好きなことだけやって生きることで、果たして「魂」は磨かれるのだろうか?
幾多の底辺の販売員を洗脳し続けるダイヤモンドナニガシはまさにLivin' on A prayer?
私にはドン小西にしか…
翌る日。
優秀な上位女性販売員の自宅に夕食に招かれ、フライパンや油や浄水器の良さを散々宣伝された。
「何だこの新しいソフト風俗は?」という感覚になり、まんまと浄水器を分割購入した私のことを、どうぞ笑ってくれて構わない。
確かにその人は美魔女だった。
説得力あるセールスにまんまと…
しかし、本来の卸や小売にかかるマージンが、販売員としての売り上げ…このシステムだと商品のクウォリティは、やはりマツキヨと大して変わらないという事だ。
ということは、美魔女は影で努力していたのだ。
「結局、何使おうが変わらない…か」
その事実が私にそれ以上の購入を抑止した、という皮肉な結果になった。
…結局また、女とカネに、私の夢と時間はA自慢の洗剤の如く強引に研磨されていった。
2016年。
ソロ・シンガーとして越谷や川口、上野でそれぞれ数本のライブを経て、自主制作音源を作り(頑張ったが音質的に、デモ曲レベルになってしまった)…
例の音楽事務所やAにより友人を失ってしまった33歳の私は「歌」を基礎からプロに学ぼうと、またまたバンド、ライブというものを一旦リセットした。
実質「リタイア」だった。
それは…
その年の6月、ふと2012年、筑波山デートで大失恋した彼女と某SNSでダイレクト・メッセージを送った。
かろうじてブロックは、されてなかった!
私はこの数年、できる範囲で遊んだ女性たちではやはり満足が得られなかった!!
「…あの、中島卓偉のCDまだ貸したままだったよね?時間あったら、お茶でもどう?」
というオジサン構文を酔いながら半ばヤケクソに送った。
翌日…返事がきた。
「お久しぶりです。
あ、そうですね!お返しします。
いつ時間ありますか?
私は今、いろいろあってシングルマザーしてます」
…⁈⁈⁈⁈
続く)