〜前回までのあらすじ

時は2001年ミレニアム幕開け。

鬱屈した高校3年間のリビドーとフラストレーションを全開放するかの如く、オリジナル曲を携えたロック・バンド「GYPSY」の活動を始動させた私。

大学の音系サークルで知り合った木村という男をGYPSYのボーカルにしたが…
私はなんとその彼女の歩に言い寄られ、サークルの夏合宿でキスをしてしまった!
それでも黙って2本のライブを終えたけれども。。

歩は性に開放的なマイルド・ヤンキ…、否。
貞操観念ゆるゆるメンヘラ病ん鬼。

その後も私と木村を掻き回し、あれよあれよとGYPSY崩壊!

なかなか歩にゃ落ちない私だったけど、チャッカリ越えた第一線…
「GYPSYも終わったしもうどうにでもなれ!」

嗅ぎつけた木村からの怒号と罵声を浴びた私は、歩の巧みなやり口と強かさに苛立ち、木村に「お前と別れたがっていた」という歩のハラを伝えるも、信じず歩に確認の電話をするという引き金を木村は引いた!

哀れ木村…それは奇しくもお前の愛した歩が負ける、そして私の勝つフラグだ。

歩は、事実にも関わらずアッケラカンと見事な演技で否定。
むしろ私と関係を持ったことを盾にし、その責任と自分を悪者扱いし逃げようとする私を懲らしめようと、地元仲間総出の威嚇ときたもんだ。

対する私も、かかるものかその美人局!

私も確かに加害者、しかし被害者。
痛い思いは勘弁願いたい!

隣町のチームと聞いて、DQN風情におちおち何されるかわからない。

そこで頼るはこちらも地元走り屋同級生達。
1人は近所の幼馴染み…

奇しくもGYPSYボーカル候補で歌唱力のみ木村に及ばなかったY!

「そっちがその気ならこっちもVIP車チームで話聞くよ。伝言よろしく」


意外な強烈カウンター喰らったクラッシャー歩が慌ててYに出したその答えは?


※(今回の話は特にだが、仮にもし、私が名の知れたインフルエンサーだとしたら、件のような一部始終を公開することは現代において木下優樹菜レベルの炎上と総スカンの嵐に成りかねない、人によっては胸糞悪いものと認識している。

まぁ、ロック・スターになれなかった41歳のこの私の、過去の栄光として笑い飛ばしていただけたら幸いだ。)



では、本編〜

Y「あー、歩さん。どうするよ?」


歩「あ、Yくん、だっけ?

…その、よかったらさー

今度ー、

ウチらと遊ばない?

せっかくの機会だしー」



(……………?)



Yも、彼の携帯から漏れる音声を耳にした私も

一瞬、歩が何を言っているのか理解できなかった。



待て待て。


こっちは同郷での恩義と縁がある私のために、訳の分からない色恋沙汰にめんどくさがらず首突っ込み、動こうとしてくれた地元の幼馴染み・Yと走り屋のCら。


かたや複数の男に手を出し、人間関係を掻き回した被害者ヅラの女と、それに泣きつかれさぞかし、ご立腹であろうバックのお仲間連中から私たちに差し出されたものは…


挑戦状ではなく…

まさかの、遊びの誘いかよ?!


仲間が遊ばれ、コケにされたというのに??


怒りとかプライドとか…無いの???


一体全体どういう情報の入り方している?


Yは呆れて

「ブハッ…
は?何言ってんの?

おいおい…
いや、なんでそーなんの?
つーか単車じゃねーし。

待てよ。で、拓也と木村って奴のことは…

…はぁ?

あぁ、考えとくよ。はいはい」

プツ

愕然とし、理解に苦しむのを通り越しYは笑い出しながら

「…んだよー!つまんねー!

遊ぼうとか言ってきやがったぜ?

こっちはウズいてたんだけどなー。

あーしらけた。

拓也。あいつらも、歩ってのも、お前にはもう何もしないよ。良かったな…」


Yは呆れ果てていた。


あれ、ハナシつけるはずの手はずだったような…?

私と木村、、歩。
まず当事者の立場と言い分を、互いが明確にするのは勿論。

あちらは特に、仲間が傷つけられた手前、気合い入れて歩をケアし守り、私や木村に落とし前つけてもらう…というのが、彼らのような人種がいう「通すべきスジ」ってやつでは無いのか?


どころかところが!

…私と木村は、もう退場してよい?と。


で、隣町のVIP車チームと仲良くなりたい?


…こんなくだらないきっかけで??

こんなくだらない結末!


もし当時、LINEやエックスがあれば…
私はこの一連の流れと見事なオチをスクショし、栄光と笑い草に末代まで永劫、語り継いでいただろう。


まだまだカラーといえどドットが荒い液晶の直方体端末から繰り広げる音声のみの頭脳バトルにて、手持ちのカードだけで無傷のまま圧倒的な勝利を果たした私なのであった。



「おー、C。
あぁ、例の拓也イビッてたNの奴らさー

そっこー電話きてさ…

なんか、俺らと仲良くしたいってよ!

…だよなぁ、ウケる。

そいつらのクルマ?いや、何乗ってるかよくわかんねー。言ってなかったな。
…単車じゃね?」


溜め息混じりのYはシーマ乗りのCに報告。


「なんだよ、ショボいな。。

その女のツラ、少し拝んでみたかったけど。

男沙汰で事荒立てたりアタマおかしい事言うような奴らと遊ぶのは…勘弁だな」


因みに私の地元の彼らはわざわざ、町を跨いでまで勢力広げ、遊ぶ仲間増やしたりし、パリピ振る舞いたいわけではなかった。

地元を、同級生や母校のつながりを大事にした。

もちろん地元で結婚、仕事に遊びに本気。

いまも、facebookなどで個人経営の美味い飲み屋をあげてたりする。

少なくとも、郊外でリゾート、ディズニー、キャンプでウェーイ…

そんな承認欲求プリーズ的なハリボテな投稿など見たことはない。


かたや歩の方は、おそらく暴走族の末端…

煌びやかなチャラモテ世界に本能のまま飛びつく男と半端な学とプライドで世の中舐めてる女らの、ボウイと尾崎だけがバイブルで、被害妄想の病んキー崩れ、成人手前でイキがるような最後っ屁の吹き溜り程度だった。


言いすぎたか。


やりすぎたか。


いや、私は何も。。


まぁ、もう20年以上昔の話だ。


今も時折、SN線で車を走らせていると、

この吹き荒れる春の嵐の如く、行き場をなくした思いやエネルギーを有り余らせていたあの時の、苦く心地よいアメリカン・コーヒーのようなグラフィティーが脳裏に浮かんでは、キリキリとこの胸に軽い胃痛をもたらすのであった。