私としては行き当たりばったりのつもりでいるのだが、俯瞰で眺めてみると、どうもシナリオが予め書かれている臭い。それは後からそう思うのではあるけれど。 百科事典の別巻日本の美術の頂相彫刻のリアルさに幼い私は畳に腹ばいになってよく魅入っていた。西洋彫刻にはそのような思いで魅入ることはなかった。そう考えると、作った立体像から陰影を排除し、陰影の呪縛から解き放ち、以後それまでの実在者制作から寒山拾得など説話上の人物に転向を決めていたのに前言を翻すことになったのは、建長寺の開山、蘭渓道隆の頂相に打たれてしまい、禅宗では師の教えそのものとして描かれた、と知ったとき、幼い私が魅入られた理由を理解した。