昭和44年、中一の時に講談社版『江戸川乱歩全集』の配本が始まった。布貼り本など初めて手にしたが、数冊しか買えなかったものの代表作は読めた。横尾忠則さんの挿絵は最初奇妙に見えたが、読んでいるうち、乱歩にはこれ以上ない世界だった。後にボロボロになった一冊の挿絵にサインをいただいた。 中学を通じて江戸川乱歩と谷崎潤一郎にハマり、授業中も読んでいて教師に見つかり、読んでいたのが、よりによって谷崎のレズビアニズム小説『卍』で一部朗読させられた。東京下町葛飾区の中学で女性の関西弁を読まされる恥ずかしさはトラウマ級であった。 乱歩と谷崎は65年の7月に2日違いで亡くなっている。嵐山光三郎さんに、乱歩は谷崎になりたかった人と 伺ったことがあるが、資質に陰陽の違いはあるものの頷ける。そして私の初出版が『乱歩 夜の夢こそまこと』(パロル社絶版)で、乱歩の〝現世は夢 夜の夢こそまこと‘’ は幼い頃から始まる私のテーマともなって今に至っている。