蘭渓道隆像は、国宝である斜め45 度向いた唯一の寿像(生前描かれた)だけを元に制作したが、立体にすれば、どこからでも撮れる利点を生かしたい。蘭渓像は絵画、立体像ともに数々残されているが、何百年前に制作された名工の作だろうと、没後に作られたとなれば条件自体は私と一緒である。寿像が真実にもっとも近い、と考えるのが当然とするならば、信仰の対象になって来た開山像に対して失礼を承知でいうならば、どの蘭渓像とも私は意見を異にする。男専門に四十年以上制作してきた渡世上の信念に従ったとはいえ、建長寺のHPにも載る開山様の木像と面相が違う像を持って建長寺の門をくぐるのは、ネズミが象の股下をくぐるが如き心持ちであった。