立体像を作るということは、陰影を作り出すことに他ならないが、それを自ら排除するのは葛藤があった。葛飾北斎が画室にて、障子に写る影と、はみ出した足から、どうやら『蛸と海女』用に裸の女をデッサンしているようである。襷がけをして何かを覗き込むように絵を描く北斎は作ってあるのだが、以前、つげ義春トリビュート展用に『ゲンセンカンの女』で半裸の女に行灯の灯りによる陰影を与えたい欲望と闘った経験があったので辞めてしまった。しかし陰影表現の復活により、この北斎をもって私のモットー〝感心されるくらいなら呆れられた方がマシ“な北斎を完成させることになるだろう。北斎は一説によると180センチくらいあったという。同じ〝世界の“黒澤明と風貌が似ていると思いながら作った。