ホームにいる母が食が細くなり寝てることが多くなったと聞いた。老衰だろうと。前回建物のガラス越しで携帯で話した時は話し方がイヤにボンヤリして、ボケが始まったと思った。遮る物なく面と向かってみると顔色はよい。ただ私の高校時代に亡くなった祖母の死を覚えておらず首を傾げる、戒名代をまけさせ、死装束の草鞋の結び方を周囲にレクチャーして死んだ。坊さんが挨拶で肝心してたじゃないか?と言ったが覚えていない。 母はボケたふりして「どちら様ですか?」というギャグはホームでは誰でも一度はやられている、ギャグでなくなる日も来るだろう。しかしここ数年のことはよく覚えていて、同居していた頃の私の飲み仲間はみんな覚えていた。70過ぎて酔っ払って昨年も肋骨を折ったKさんに「まだそんなバカなことしてんの?」祖母の死を忘れてKさんが記憶にあると思うと複雑である。 しかし寒山拾得を手掛けて以来、子供時代の記憶が蘇り、母がいなければ寒山拾得には至ってはいなかったろう。感謝を伝えることができた。母が薄ぼんやりしてるから、どさくさに紛れてではあったけれど。感謝してるんだ、と笑った。私手製のきゅうりの糠漬けを美味しそうに食べた。