いい加減な割に、こう決めたらそうすべき、というところがある。なので今後陰影のない手法一筋で行こう、と思っていたのだが、そのせいでかえって私が一番恐れる、死の床で、あれを作りたかった、これも、と後悔に身を捩ることになりそうだ、と思い始めた。羅漢図まで行ってしまうと戻れないかもしれない。その途端、現金なもので、薄暗い所からドロドロドロドロと迫り上がって来る九代目團十郎の仁木弾正が浮かんで来るわ、子供時代の岡本綺堂が怖くて走って家に帰った、という圓朝の高座が浮かんでしまった。特に圓朝は、あそこを高座に設定し、と考えていたことを思い出した。死の床では間違いなく思い出すだろう。 ホームにいる母は、仕事をしていたせいで社交的が過ぎるくらいで楽しくやってる。友人でも、親が専業主婦は、他人が家に来るのも嫌がるので下の世話までして苦労している。〝夜の夢こそまこと”などとはいっていられないだろう。その母もこの一年でだいぶボンヤリしてしまった。介護認定の再判定を申請しようとしていたら、数千人待ちだった特養ホームから連絡が来て見学に行く。新築で以前住んでいた町で3キロ以内。決まると良いが。夜は恒例の工芸学校時代の連中と忘年会。