泉鏡花作『貝の穴に河童の居る事』を出版した際、これを見た知人に、私の孤独を想った。といわれた。飲み仲間から選んだ方々に出演してもらい、私の作った河童と共演してもらった。和気あいあいの実に楽しい制作であり、私の孤独?と意外な言葉であった。 知り合いにもう70過ぎた酔っ払いがいて、何度も流血し、救急車に乗せたこともある。彼のバンパーたる額は傷だらけである。つい最近も肋骨を折った。女の尻を追いかけ、酔っ払って幸せだろう、と周囲の人間は口を揃えていうのだが、私には寂しい淋しいという彼の叫びが聞こえ、そうは思えない。酒という鎮痛剤をいくら飲もうと虫歯は治らない。 一方私は家族などに囲まれていると、孤独が深まってしまう類いの人間である。そんな自分勝手な人間が,全力を持ってどこからか妙なイメージを絞り出して来て、呆れられたり、楽しんでもらったり、それが私の渡世だと考えている。私の孤独を想った人には、楽しそうに見えるけれど、と件の酔っ払いと同じように見えるのだろうか?