知り合いがCT検査でたまたま癌の疑いを指摘され、しばらく落ち着かない様子だった。再検査の結果、たいした事がなかったが。若い頃、たまたまテレビで黒色メラノーマという死亡率の高い皮膚癌の番組を観て、そういえば、右手のヒラに黒子のようなものが出来たな、と心配になった。ところがその話を、飲み仲間に某医大の医者がいるという女の子に相談したのが悪かった。飲みの席で聞いたらそれが癌だったら手首から切断だって、という。すぐに診てもらってその場で切除検査、結果が出てる一週間生きた心地がしなかった。ネットがない時代、図書館で調べると、試験切除が刺激になり転移する場合がある、と。左手なら、オプションでナタやフック船長のようなカギを作るが、右手なので、だったら死ぬしかない、と思った。創作以外に使い物にならないのは自分が一番知っている。結果を聞きに行くと、もったいぶっている。女の子に、少し脅かしてくれと言われたという。ふざけんな、という話である。なので知人の気持ちも良く判った。 それが今だったら、寒山拾得展が終わり、やっておいて良かった!と思ったろう。その効果が切れる前に次に行かなければならない。長い目標を持たず、作り残しのないよう作り続ければ、常に目標を果たしたばかりの気分で死ねるのではないか、というのが私の企みである。