毎年松尾芭蕉にちなんだ各所で持ち回りで芭蕉サミットが開催されるのだが、今年は江東区の芭蕉記念館で行われる。江東区には小林一茶も住んでいたらしいが、江東区といえば小津安二郎と松尾芭蕉が世界的な二大スターといえるだろう。その二人を私が作っていたことで江東区の収蔵となっている。そこにある限りずっと観てもらえるとうのは何よりである。 何年も前になるが、芭蕉の名の由来となる芭蕉の木を生やした芭蕉庵があった江東区であるから、絵では様々な人が描き残した芭蕉庵の芭蕉はあるが、立体で作ったらどうだろう、と職員の方に話したことがあるが、いってみるもので、予算もなんとかなりそうだ、という。ところが先方は、すでに一体収蔵しているからか、芭蕉庵のみのつもりでいた。私はジャズシリーズ時代も楽器はしようがなく作っていた口であり、あくまで人物のために作っていた。木場を擁する江東区である。隠居した大工の棟梁にでも頼んだ方が間違いなく良い物が出来る。芭蕉庵まで作ると提案したのはあくまで句作に想いをはせる芭蕉を作りたいがための背景としてである。そもそも私の芭蕉を物思いにふけさせるには軽く1メートルは超えてしまうだろうから、そんな立派な犬小屋みたいな物を作る気はなく、肝腎な部分だけのつもりあり、芭蕉像を横にして、現場合わせで作るつもりでいた。というわけで、つくづく打ち合わせは顔を見ながらやるものである。これにかこつけ、5月の個展に芭蕉作品も出してしまうというのはどうか。芭蕉こそ陰影なしの石塚式ピクトリアリズムにふさわしいだろう。いずれそれ用の用紙でも出てくれば軸装も試みたいものである。