江東区芭蕉記念館に収蔵された芭蕉像を三階に移した、というので雨の中出かける。そう言えば、収蔵当時、あまりにも髭が泥棒調だったので、いくらか薄くするため修正に出かけたが、展示されている所はまだ見ていなかった。完成し、まして嫁いでしまえば、もはや他人だ、くらいに私は冷たい。できてしまった作品に対し温かいも冷たいもないけれど。 しかし制作中、私は珍しくカッカしていた。俳句の枯れたイメージに利用されているのだろうが、全国の芭蕉像が、私より年下の芭蕉が、ヨボヨボのシジイ扱いなことに腹を立てていた。そこでイメージが違うと言われるのを承知で、嫌味なくらいに芭蕉の門弟等が描いた肖像、つまり間違いなく芭蕉を見知っている連中の絵のみを参考にした。日頃本当の事などどうでも良いなんてほざいてる割に、つい意地を張った。 しかし、夏目漱石のように、鍵鼻を写真師に修正させ、つまり本人に嘘をつかれてしまえば、一介の人形作りがホントは鍵鼻だ、そんなこと気にしてるから胃を病むんだ、といった所で文豪の肖像はこれからもあのままであろう。 ところて毎年各地で、芭蕉サミットがおこなわれるが、来年は芭蕉記念館でおこなわれる。そこで奥の細道旅立ちの地深川として、もう一体制作することになった。勿論、二体目はただ突っ立っている芭蕉ではない。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』
『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界