しばらく続いた負の連鎖も、母の入院と、スマホの充電機の故障で終わったかのようである。母はまたもふくらはぎの炎症で、抗生物質ですぐ良くなるだろう。 朝、懐かしく聞き覚えのある音を聞いた。夢なのか本当の音だったかは定かではない。子供の頃、葛飾区の日曜日の早朝、布団の中で聞いた近所のドブさらいのスコップの音である。定期的に、近所の奥さん方が集まり行うもので、浅いドブでも結構体積物は溜まっている。母や隣のおばちゃんも当然参加しており、話し声とスコップの音が実に懐かしい。 その頃、叱られてばかりいた私の母への唯一の仕返しは、セールスマンに、母がうちにあるので間に合ってます。と聞いたとたん走って来て母の背中から、それウチにないよ。というものであつた。嘘をついているのは母なので、私を叱る訳にもいかない。懐かしい。東京オリンピックの前頃だろう。今度のオリンピックはホントにやるとしたら、本当に馬鹿な国である。前回のオリンピックを私は良く覚えていて感激が忘れられないが、その代わり東京の変わりようが甚だしく、私にとっての東京はオリンピック以前の思い出でしかない。以来、東京というものはそういうものだ、と諦めの境地で、その後の東京は、どう変わろうと関心がない。私にボク、口開けつ放しにしてると埃がはいるよ、といった隣のおばちやんはボクが生きている間には、もう日本でオリンピックやることないだろうね。といつていたが。それにしても、もう少しドブさらいの音を聴いていたかった。
タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第16回『トラウマ』
『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界
