三島由紀夫『昭和残侠伝』はほぼ完成し、返す刀で泉鏡花の撮影に入るつもりであったが、なんとも三島から去り難く、未練がましくいじいじしていたら眠くなって寝てしまった。今回の三島は、女刺青師、彫Sが描いてくれた唐獅子牡丹によるところが大きい。数年前から構想はあったが、刺青をどうしようか、打開策がなかったのが、本職に直接描いてもらう、ということで昨年ようやく実現した。私は三島の背中のどこかに彫Sの名前を入れたら、といったが私の作品だから、と遠慮して足の裏に。 刺青師には医療の資格が必要、などと、妙な裁判の最中。刺青業界も微妙時期であるし、業界自体も保守的であり、私の個人的な印象だが、あまり目立つことはしたくないようである。昨年の深川江戸資料館の個展『深川の人形作家 石塚公昭の世界』には担当者の判断で無事出品できた。もっとも人形に絵が描いてあるだけだから問題があるはずもない。まして粋と鯔背の本場深川だし。しかし今時は何にでもクレームが来る。せっかく作って出品出来ず、だけは避けたくて一応確認した。来月13日からの丸善の人形展にはプリントを出品する。丸善も念のため確認済みである。 数年前に三島が様々な状態で死んでいる『男の死』の個展をやるさい、妙な連中を恐れて画廊2カ所に断られている。そんな訳がないだろう。もちろんそんなクレーマーは一人も現れず、それどころか鈴木邦男さんに来ていただいてしまったくらいである。

※8月31日まで谷中『全生庵』円朝旧蔵の幽霊画を公開中。それに伴い三遊亭円朝像を出品。
みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー
※深川江戸資料館11月まで九代目市川團十郎像を展示。