九州帝国大学医学部を舞台に、アメリカ人捕虜の生体解剖を行った事件のTV番組のため、卒業写真帖を福岡から来た番組スタッフに貸し出しだ。そこに、ことの発端となる捕虜の解剖を母校に持ちかけた男が、卒業生として、クラスメートとともに写っているからである。探しても入手できなかったそうで、遺族に連絡してもなしのつぶてだそうだ。この男を含め、重要な役割を担った人物は早々に亡くなっており、関係者が責任を被せたであろうことは想像に難くない。 生きたまま解剖する、というおぞましい事件ではあるが、おそらく当時の状況を考えると、たいした手続きもなく、処刑される運命にあったろう。それを考えると、当事者は殺されるとは夢にも思わず麻酔で寝かされ殺されたのだから、まだましだった、という考え方もあるだろう。遺族の中にもそういう意見もあったようだ。 しかしこの事件には、余計なスピンオフドラマのような物が付属していて、それがまたおぞましさに拍車をかけている。捕虜の肝臓を酒の肴に食ったという噂である。まことしやかに伝わってはいるが、事実ではない。なのにそれは時間の経過とともにセットとして、まるで人肉食事件のイメージとして残り、関係者への取材をさらに難しくしているようである。 放送は来月中旬。全国放送である。