印象派絵画の影響を大きく受けたであろうピクトリアリズムは、ソフトフォーカスレンズも長く使用された。私も数本所有しているが、肝心のオイルプリントにしよう、となると敬遠してしまう。今回も選んだデータの中にはソフトフォーカスな作品は1カットしかない。オイルプリントのような曖昧な技法には、せめてネガは曖昧ではなく、くっきりしていて欲しい、というところであろうか。 そういえばピクトリアリズムで印象派、さらにヌードなどというと私がルノワールを好きだと思う人もいるが、最も好きな裸体画はクラナッハであり、大嫌いなのが、血色の良い水死体のようなルノワールなのである。 子供の頃、近所で揉め事があると、その輪の中に前掛けしたまま必ず混ざっている乾物屋がいた。どうやって揉め事を嗅ぎ付けて来るのか、その鮫のような嗅覚が子供の私には謎であった。近所といっても揉め事が聴こえる程ではなく、角が邪魔して店から見える場所ではない。揉め事の主は過剰な正義感の持ち主の某オヤジと決まっていて、乾物屋はその横で重要な会議に出席している調子で、オヤジの参謀のような顔して加勢していた「あんたそりゃ道理が通らないぜ」。道理ということばを始めて聞いた。 その乾物屋の店の奥にぶら下がっていたのがルノワールのカレンダーであった。乾物屋としては乾物でくすんだ店内を少しでも華やかにしようと思ったのであろうが、子供の私にはルノワールのせいでよけいくすんで見えた。
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