『貝の穴に河童が居る事』には異界の妖怪が登場するが。蛇なら蛇、カラスならカラスのままだが、唯一違うのが女の顔をしたミミズクである。千里眼で、離れた旅館に滞在する芸人三人の情報を異界の森にもたらす。上野動物園の金網越しのミミズクで1カット作ったのだが、けっこう重要な役どころでセリフも多い。これでは使い物にならない、と作り直すことにした。数ヶ月、ミミズクの撮影場所を検索していたら、近所に『鳥のいるカフェ』ができてしまった。これでいつでも撮れる。あとは撮りたくなるのを待つだけである。周囲では何故はやく撮りにいかないといぶかる向きもあったが、撮りたくなって撮ると違いがでるのである。食べ物が空腹で食べると美味しいのと原理は同じである。ショーウインドウには鷹と世界最大クラスになるというミミズクがいる。メスなのでオスはさらに大きいと訊いたかもしれない。しかし撮ってみると、兵隊の位でいうと私よりよっぽど貫禄があり、女顔のミミズクにはちょっと怖い。結局店内の椅子につながれた小さいミミズクを撮影した。これがやたら可愛い。長年飼った熱帯魚も全滅して久しい。撮りながら欲しくなってしまった。天気の良い日にもう一度撮らせてもらうことにしたが、空腹で撮ったものだから、やはり出来が良く、本日の撮影で間に合ってしまいそうである。問題はこれをどう女顔にするかである。申し訳ないくらい顔を潰して合成することになるだろう。