「ギャシュリークラムのちびっ子たち」
エドワード・ゴーリー:作
柴田元幸:訳
河出書房新社
26人の子どもたちの死を描いた「怖い絵本」。
★★★〈自分が読んだ動機〉★★★
大人の絵本作家としてカルト的人気を誇るエドワード・ゴーリー。
友人から聞いて以前から気になっていたので手を出しました。
★★★〈こんな人におすすめ〉★★★
・大人向けの絵本を読みたい人。
・怖い絵本を読みたい人。
★★★〈淡々と描かれる26人の子どもの死〉★★★
「Aはエイミー かいだんおちた」
「Bはベイジル くまにやられた」
「Cはクララ やつれおとろえ」
「Dはデズモンド そりからなげられ」
こんな調子で、名前の頭文字順にAからZまで、26人の子ども達の死が続きます。
子どもの名前と死因を説明するだけの、わずか一行の言葉。
死の間際、もしくは死の直後の様子を描いた絵。
それが26人分、淡々と続くだけです。
★★★〈独特の不穏な雰囲気の線画〉★★★
エドワード・ゴーリーの絵は、白と黒のみで描かれた線画です。
表紙には骸骨のような顔の黒服の人物?と、黒服の人物が持つ黒い傘の下に並んだ26人の子ども達。
裏表紙には、26個の墓石。
黒服の人物は死神のように見えます。
死神にロックオンされて、死ぬ運命を背負った子ども達。
そう連想させる絵です。
独特の線画で描かれた白黒の絵は、全体的に暗く、不穏な空気が漂っています。
子ども達の絵は可愛くて、どこかユーモラス。
しかし死に瀕した子ども達はみな無表情。それがシュールで、余計に不気味さを増長しています。
「可愛いけど怖い」「怖いけど暗すぎない」
一目で「怖い」と思うインパクトはありませんが、暗い影が広がっているような、後を引く不気味さがあります。
★★★〈子ども向けではない〉★★★
小さな子供がこの本を読んだら、ショックを受けるかもしれません・・・
暗い雰囲気の中、延々と「死」を見せつける絵本は、子どもにとって怖いと感じると思います。
意味について色々と深読みするのが好きな、大人向けの絵本です。
★★★〈意味が分からないのに惹きつけられる、不思議な魅力〉★★★
文章が少ないため一瞬で読み終わってしまいました。
ストーリーは無く、26人の子どもたちの死が羅列されているだけで、読み終わった後は「???」となりました。
本の意図が全く分からない。
それなのに何度も読み返してしまう、不思議な魅力があります。
絵本全体に漂う不穏な空気。
「どういう意味だろう」と考えてしまう奥深さ。
あえて分かりやすく表現しないことで表現する。
そんなエドワード・ゴーリーの独特の世界観に、この一冊で魅了されました。
★★★〈死は身近にあると言うメッセージ?〉★★★
この本で作者は、「死は身近に存在する」ということを表現したのでは、と思いました。
26人の死因は、階段から転落、水に落ちて溺死、食べ物を喉に詰まらせて窒息、ごろつきに殺される、バーで喧嘩の巻き添え、落下物が頭に当たる、病気、深酒、誤飲など。いずれも事故・事件・病気といった現実的なものばかり。
不幸な偶然が重なっただけで、ほんのわずかな不注意で、あっけなく命を落としてしまう。
そう表現しているのではないか、と思いました。
そして危険を知らない子どもは、知らず知らず危険を犯してしまう。
だから、不幸な結末を迎えないよう、注意しないといけない。
そんなメッセージが込められているのでは、と思いました。
26人の死因の中には、気を付けていれば回避できたものが多いです。
とはいえ子ども向きの絵本とは思えないので、子どもを見守る大人への警告だと感じました。
★★★〈終わりに〉★★★
何の意味もないように見えて、実は多くの意味が込められているように思える。
どこまでも深読みできる奥深さがある、大人の絵本です。