「神秘島物語]

ジュール・ベルヌ:著

講談社

 

 

 

 

 

 

絶海の無人島に漂着した5人の男の、無人島開拓・冒険物語。

 

★★★〈自分が読んだ動機〉★★★

小学生の時にジュール・ベルヌの作品が大好きになり、ベルヌ作品を読み漁っていた時に出会いました。

 

 

★★★〈こんな人におすすめ〉★★★

・サバイバル物語が好きな人。

・冒険物語が好きな人。

・DIYが好きな人。

・ジュール・ベルヌの作品が好きな人。

・「海底2万里」に登場した潜水艦ノーチラス号とネモ館長のその後を知りたい人。

 

 

★★★〈登場人物〉★★★

サイラス・ハーディング・・・アメリカ北軍の大尉。鉄道技師で科学者。5人のリーダー格。

ネブカドネサル・・・ハーディング家の下男。本職並みの鍛冶の腕前を持つ。

ギデオン・スピレット・・・新聞記者。画家・詩人でもある。

ハーバート・・・博物学に長けた15歳の少年。水夫としても一人前。

ペンクロフト・・・ハーバートの父親の船に乗っていた水夫・船大工。農場仕事も得意。

トップ・・・ハーディング大尉の賢い飼い犬。

 

 

★★★〈あらすじ〉★★★

南北戦争時代のアメリカ。南軍の支配するリッチモンド市から北軍の陣営へ、気球に乗って脱出を図った5人の男と1匹の犬が主人公。5人の乗った気球は強風に流され、絶海の無人島に漂着する。

5人の持ち物は、身に着けている衣服の他はハンカチと1本のマッチ、1粒の小麦、2つの懐中時計のみ。ありあわせの材料で作った道具で緯度と経度をはかり、容易に海を渡ることのできない絶海の孤島であることを知った彼らは、脱出できるまで島で生き抜く決意をする。

狩猟や採取に始まり、植物の繊維から縄や網を作る、レンガや陶磁器を焼く、鉱石から鉄を作り、ナイフや斧といった道具類を作る、爆薬を作って土木工事を行う、風車や水車・カヌー・船・電信装置を作る等々。

卓越した知識・技術・身体能力で、島で生きる環境を整えていく。

 

彼らが「リンカーン島」と名付けた島では、時折不思議なことが起きた。

島に漂着する寸前で気球から海に落ちたハーディング大尉がいつの間にか陸にあがっていた、ジュゴンに水中に引きずり込まれたトップが水の上に投げ返された、様々な道具・銃器などが詰まった箱が海を漂っていた等。

「この島には神秘の力が働いている。」「神秘の力を持つ人がいる。」

困難に陥った時に手を差し伸べてくれる姿の見えない人の気配を感じながら、5人はリンカーン島で安定した生活を築いていく。

 

 

物語は3章に分かれています。

〈1章〉

彼らが島で生きていく環境を整えていく様子を描いている。

 

〈2章〉

リンカーン島の近くにタボール島という島があることを知る。その後タボール島に難破者がいることを知らせるガラス瓶入りの手紙を海上で見つけたことから、作り上げた船でタボール島に向かい、難破者アイヤトンをリンカーン島に連れ帰る。アイヤトンは元海賊だったが、自分を優しく迎え入れてくれた5人のために尽くそうと決意し、仲間となる。

 

〈3章〉

リンカーン島に海賊の船が現れ、圧倒的に数の少ない6人で戦う決意をする。

また島の危機に瀕して神秘の人の存在もいっそう濃くなり、6人は神秘の人を探すことを決める。

島に緊迫した空気が漂い、物語は激しく動き出す。

 

 

★★★〈異常に高いサバイバル技術〉★★★

絶海の孤島に漂着した5人の男と1匹の犬のサバイバル物語です。

漂着した島は、あとがきによると日本の佐渡島くらいの大きさで、広大な森・火山・湖や川などを擁する自然豊かな美しい島です。

5人は漂着した島で生き抜く方法を模索します。本書が他のサバイバルものと一線を画すのは、5人はみな賢く強靭でなんらかの専門知識・技術を持っており、作り出すもののレベルが異常に高いことです。

5人の行ったことを抜粋すると以下のものがあります。

 

・ありあわせの材料で作った道具で緯度と経度をはかり、島の位置を知る。

・良質な粘土からレンガを作る。

・窯を作り陶磁器を焼く

・鉱石から鉄・モルタル・ガラスを作る。

・作った鉄でナイフや斧・はさみ・のこぎりなど道具類を作る。

・ウサギの毛皮やアザラシの皮でコートや防寒具を作る。

・アザラシやクジラの油からろうそく・石鹸を作る。

・鉱石から様々な薬品を作りだして爆薬を作り、土木工事を行う。

・ポケットに入っていた一粒の小麦を栽培して増やし、麦畑を作る、

・カヌー、船、風車小屋や石臼、水車、水力昇降機、橋、電信装置、電線を作る。

 

作業の手順、特に鉱物から薬品を作り出す方法などは化学の教科書のように記述が詳細で、島での生活が決して絵空事ではなく、科学技術に基づいていることを伺わせます。

 

5人がそれぞれの力を発揮して生活を作り上げていく様は、サバイバルというより新しい土地を開拓して文明を作り上げていく、と言った方がふさわしいです。

 

「芸は身を助く」といいますが、何らかの知識・技術を持っていると、いざという時に役に立つ、と知識・技術を身に付けることの大切さを教えてくれました。

 

 

★★★〈サバイバルというより痛快な開拓・冒険物語。〉★★★

人は困難な状況に陥るとパニックを起こしたり、人間の本性が剝き出しになって争うことがありますが、本書の主人公たちは負の感情を一切見せません。

着の身着のまま絶海の孤島に漂着しても、海賊が現れても、誰も絶望せず諍いを起こすこともない。どんな時も冷静で、一致団結して困難に立ち向かう姿は実に勇壮で生き生きとしています。

 

特にずば抜けた知識・技術・統率力を兼ね備えているのが、リーダー格のサイラス・ハーディング大尉。4人に「あの人がいれば大丈夫」「まるで魔術師だ」と言わしめるカリスマ性の持ち主で、島の発展は彼の存在があったことも大きいと思います。

彼のリーダーシップの下で「さ、今日は何をしますかね、大尉さん」、ととても楽しそうに生き生きと働き、島に永住したいと口にするほど豊かな生活を作り上げていきます。

 

豊富な知識と技術・絆の深さ・何かを作り出す喜び・戦いに臨む勇ましさなど、人間の素晴らしい面が存分に描かれており、とにかく前向きに生きる力に満ちている物語です。

 

 

★★★〈「海底2万里」のノーチラス号とネモ館長のその後〉★★★

本書では、ジュール・ベルヌの作品「海底2万里」に登場した潜水艦ノーチラス号とネモ館長のその後の物語と、ネモ館長の正体も判明します。「海底2万里」を読んだ方には絶対読んでほしいと思います。

 

 

★★★〈終わりに〉★★★

本書のジャンルは、サバイバル物語・科学技術を駆使した開拓物語・冒険物語、を全て網羅しています。

私は何かを作ることが好きなので、自分達であらゆるものを作り上げて、何もなかった島で豊かな生活を築いていく様子に特に心を惹かれました。

とにかくワクワクしながら読み進められる、痛快な冒険物語です。

 

 

★★★〈「神秘の島」というタイトルでも出版されています〉★★★

私が読んだ「神秘島物語」は、小学校の時に読んだ児童書です。大人向けバージョンは「神秘の島」というタイトルで出版されています。

少々お高いですが、いつか読みたいと思っています。

 

 

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