オリンピック女子体操チームの主将である宮田笙子選手が、五輪出場を辞退したという次の記事を読んで腑に落ちない点がいくつかあり、他の関連記事にも目を通しました。

 

本人も合意の上の辞退と発表されていますが、事実上は代表の剥奪です。

 

「日本体操協会は19日、東京都内で緊急会見を開き、パリ五輪の日本女子代表で主将に選ばれていた宮田笙子(しょうこ、19)=順大=に喫煙と飲酒が確認されたため、五輪出場を辞退したと発表した。協会では情報提供を受けて本人を事前合宿地のモナコから18日に帰国させ、事実関係を確認。6〜7月に喫煙は都内で、飲酒は強化合宿で滞在していた北区の味の素ナショナルトレーニングセンター宿泊棟で行われたことが判明した。」(サンケイスポーツ)


宮田選手:サンケイスポーツ

 

彼女は19歳の大学生で、全日本選手権とNHK杯の個人総合種目を制し、オリンピック女子体操チームの主将に選ばれていました。

 

強化合宿中に彼女は一度だけ喫煙と飲酒をし、それが行動規範に違反するという理由で日本体操協会は日本オリンピック委員会に推薦取り消しの申請を行い、受理・承認されたというのです。

 

しかし、その行動規範は次の通り選手を全く信頼せず、自主性も認めない異常に細かい内容で、世界レベルを達成した一流のアスリートに対する敬意はどこにも感じられません。



 

日本体操協会が誇る「体操ニッポンという栄光の歴史」があるとすれば、それは各選手が弛まぬ練習によって各自の能力を高め、それをオリンピックの場で発揮した結果であり、協会の行動規範によるものではありません。

 

選手が競技の場で活躍できるのは、彼らが自らを律することができるからです。

異常に細かい行動規範など必要としてはいません。


2004年アテネ・オリンピック:日刊スポーツ

 

「体操ニッポンという称号は長い栄光の歴史の中で、」と行動規範の冒頭にあるように、協会は過去の優れた競技成績にがんじがらめになっています。

 

競技成績に拘わるあまり異常に細かい行動規範を制定し、一度だけの喫煙・飲酒に対しても他の協会のように注意を促すだけで済ませることができないのです。

 

協会の役割は選手の行動を規制することでなく、選手がオリンピックの場で力を発揮できるよう、環境を整え、支援することです。


日本最初の体操金メダリスト小野喬 1956年メルボルン:笹川スポーツ財団

 

多くのオリンピック日本代表選手がプレッシャーを感じると言うのは、協会が余分な圧力を排除するのではなく、協会自らが圧力を加えているからです。

 

圧力を加えて選手の活躍を阻害していることに気づいていないのです。

 

外国人選手の伸び伸びとした、自由闊達な態度といつも較べてしまいます。


アメリカの女子体操チーム:THE DIGEST

 

宮田選手は「難度の高い演技もプレッシャーも、全てを解決できるのは練習です。」とあるインタビューで答えています。

 

怪我と隣り合わせの苛烈な練習によって獲得したオリンピック代表は、彼女の夢であったはずです。

 

日本体操協会は自己の体面を保つために、彼女の夢を奪い、彼女の選手生命を危機に陥れたのです。

国際オリンピック委員会は各国の組織に対して「アスリート・ファースト」(選手第一主義)の徹底を繰り返し要請しています。


宮田選手の平均台演技:Number Web