『日本にはないけどフィリピンにあるもの」第四弾は「男女格差のない社会」です。
スイスの世界的な非営利団体である世界経済フォーラムが「The Global Gender Gap Report 2023」を発表しました。
同レポートは世界各国の経済、教育、健康、政治分野における男女格差を調査したもので、フィリピンは146か国中16位、日本は125位でした。
世界保健機関(WHO)はジェンダーを次のように定義しています。
『「Sex」は男性であるか女性であるかを定義付ける生物学的・生理学的特徴を指す。「Gender」は特定の社会が男性及び女性にふさわしいと考える社会的に構築された役割、態度、行動を指す。』
即ち、ジェンダー(Gender)は政治・経済などの制度や宗教・文化などによって構築されたもので、国・社会によって異なります。
人類が誕生して以来、長い間ジェンダーは存在しませんでした。
日本でも男女の区分なしに誰もが政治に参加し、古墳時代の前半には女性の首長も3−5割出現したと推定されており、卑弥呼もその一人です。
しかし、国家の形成過程において、男性を中心とする税制や兵役制度を確立する必要が生じ、唐の中央集権的な国家体制である律令制度が7世紀末から8世紀初めに導入されたのが、日本におけるジェンダー発生のきっかけであると考えられています。
万葉の女性:新見美術館
一方、フィリピンには16世紀にスペインの植民地となるまで、中央集権的な国家は存在しませんでした。
また、スペイン、そして次の統治国であるアメリカもジェンダー・ギャップの小さな国であり、さらに独立に際してはアメリカに倣った社会制度が導入されたので、フィリピンではジェンダー・ギャップの小さな社会が構築されています。
フィリピン独立移行政府の設立:Official Gazette
日本では江戸時代の武家制度に端を発する男尊女卑の考え方が、富国強兵の明治時代にもさほど修正されることはなく、現在にもその影を落としていることは否めません。
フィリピンには男系主義、男性優位などの思想は歴史上も現在も存在しません。
ジェンダー・ギャップの主要因となる思想自体がないのです。
江戸時代の遊女:国立国会図書館
フィリピンで待遇の良い職業に就くには、資格とその要件となる学歴が必要です。
貧しい家庭で一人だけ大学に進学させる場合には、次のような選択がなされます。
1、最年長の子供(できるだけ早く家族収入を得るため)
2、最も学力優秀な子供(確実に高い家族収入を得るため)
その結果として、高等教育の就学率は女性41.2%、男性30.2%です。
フィリピンの大学生:Miriam College
高等教育の就学率の差は、職能型で資格・能力主義のアメリカ式雇用制度の場にそのまま反映されています。
役員・幹部・管理者と専門職・技術職の男女比率は、それぞれ46.6/53.4%、42.2/57.8%です。
Photo from Philstar
公的な育児支援など一切ない中で、フィルピン女性の社会進出を可能にしているものは何なのでしょうか?
それは、フィリピンの家族主義、大家族主義です。
フィリピンでは人生で一番大切なものは家族だと考えられています。
家族、さらには大家族が助け合うことが日常的に当然のこととして行われているのです。
Family reunion:Philstar
次期大統領選挙では、現在の副大統領Sara Duterteがぶっちぎりで当選するだろうというのがもっぱらの下馬評です。
実現すると、1986年にマルコス独裁政権を倒したCorazon Aquino大統領以来、3人目の女性大統領になります。
Corazon Aquino:Bane Obrenovich
Sara Duterte:DFA