昭和24年(1949年)に小学生になった私の時代にもいじめはありましたが、たまにガキ大将が弱いものいじめをする程度で、皆が同調するようなことはありませんでした。

 

いじめが急激に増加し始めたのは2012年頃で、2019年には61万件に達しています。

 

 

文部科学省は「不満やストレスのはけ口としていじめが起きている」と総括しています。

 

多くの児童生徒が学校で不満やストレスを募らせていることになります。

 

いじめの原因(文部科学省資料)

 

不登校は2016年(平成28年)頃からほぼ倍増しています。

 

2021年(令和3年)には小・中学生は24万人、高校生は5万人を超えました。

 

先端教育オンライン資料

 

不登校になったきっかけについての調査では、本人に係る状況(生活のリズムの乱れ、無気力、不安など)が60%、学校に係る状況が23%でそれに続いています。

 

本人に係る状況の大半を占める「無気力、不安など」は学校教育とも無関係ではありません。

 

 

先日、512人の児童生徒が2022年に自殺したことを文部科学省が発表しました。

小・中・高生の内訳は次の通りです。

 

児童生徒の自殺者数も2016年(平成28年)頃から増加しており、過去5年間で1.6倍になっています。

 

 

文部科学省資料

 

自殺の一番の原因は学校問題(小学生35%、中学生47%、高校生32%)で、家庭問題(小学生41%、中学生31%、高校生10%)を上回っています。

 

10代の死因の1位が自殺となっているのはG7の中では日本だけです。

 

 

 

いじめ、不登校、自殺など、日本の学校は多くの深刻な問題を抱えています。

 

文部科学省を中心に次のような対策が取られ、年々強化されていますが、これら対症療法の効果は限定的です。

 

1、対策基本法、総合対策大綱などの制定

2、スクール・カウンセラー、スクール・ソーシャルワーカーの配置

3、24時間子どもSOSダイヤルの設置

4、各教育委員会の活動

5、予防教育の導入

6、対策の策定・通知

 

 

そして、ストレスや悩みを抱いているのは児童生徒だけではありません。

 

2021年(令和3年)度には5,897人の公立校教育職員が精神疾患のため休職し、休職者の20%は毎年退職に追い込まれています。

 

文部科学省資料

 

これらの問題に取り組むには、原因となっている学校教育そのものに目を向ける必要があります。

 

旧法を全面改正して2006年に施行された教育基本法の第一条には、教育の目的が次のように定められています。

1、人格の完成を目指す

2、平和で民主的な国家及び社会の形成者を育成する

 

 

教育の目的を実現するため、同法第二条には「教育の目標」が次のように設定されています。

 

しかし、あまりにも総花的で、目標の中核となるものが読み取れません。

 

 

そして、目標の中核が不明確な教育基本法の下で行われているのが、次のような教育です。

 

1、道徳教育

「修身」が国家主義と天皇主義の下に国民を戦争に駆り立てる手段とされた苦い経験から、自主・自立の精神を有する主権者を育てるため、1947年に「社会科」が導入された。

 

しかし、1958年に「道徳の時間」が特設され、2018年には大津市の中学校で起きたいじめ自殺事件をきっかけに「道徳」が教科とされて、かつての「修身」が復活した。

 

東書文庫資料

 

2、校則

校則とは学校の運営上必要な学業時間、児童会・生徒会活動などに関する規則のことである。

 

しかし、多くの校則には本来の規則以外に、児童生徒の自主性に任せるべき事項が羅列されており、学校自らが教育の責任を放棄している。

 

日本共産党資料

 

3、講義中心の受動的教育

集団の能力レベルを揃えることに重点が置かれており、個人の得意分野を伸ばし、さらに眠っている才能を開発するには適さない。

 

4、学校の偏差値や入試目的の教育

個人の平均的な学力を上げることを目指しているため、個人の才能や自ら学ぶ力を伸ばすには不適当である。

 

5、記憶する学習

試験の点数を上げることが重視されているので暗記学習となり、自ら考える能力や創造性は育たない。

 

写真は東筑紫学園より

 

児童生徒は学習することによって、個人の価値観を構築し、自主・自立の精神を培い、自己の持てる才能を最大限伸ばして、成長することを願っています。

 

学校教育は独立した性格と尊厳を持つ児童生徒が中心です。

現在の学校教育には児童生徒の意見に注意深く耳を傾け、それを教育に反映するという最も重要な制度が欠落しています。

 

写真は比治山女子中学・高等学校より

 

内閣府が2018年度に実施した「わが国と諸外国の若者の意識に関する調査」のうち「自分自身への満足度」を比較した結果は次の通りです。

 

日本の若者の多くは、自分自身に満足していません。

彼らは学校教育では自分が満足するレベルまで成長できなかったのです。

 

内閣府資料