人類が集団生活をするようになって以来、争いは絶えないことが考古学調査により明らかにされています。

 

記録が残っている3,400年前から今日に至るまで、平和であった期間は僅か268年でした。

 

損傷を受けた頭蓋骨:スミソニアン博物館資料

 

戦闘員2,500万人、非戦闘員3,000万人の犠牲者を出した第二次世界大戦の勃発を防げなかった国際連盟の反省を踏まえ、1945年に国際連合が設立されました。

主な活動目的は、国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現です。

 

しかし、常任理事国の拒否権などが障害となって十分に機能せず、現在もロシアのウクライナ侵攻に介入することができません。

 

Photo by Abir Arwar

 

私たち人類は未来永劫、戦争を回避することはできないのでしょうか?

 

著名な歴史学者であるYuval Noah Harariは1945年以降、超大国同士の直接の軍事衝突は起きていない事実を指摘し、次のように世界が変化していると述べています。

 

1、超大国の戦争で核兵器が使われると、人類はいわば「集団的自殺」をすることになり、核兵器が抑止力として働いている。

冷戦下で、米ソ間の直接的な衝突はなかったように、米中の経済的・政治的競争が全面的な軍事衝突につながることは必然ではない。

 

2、何千年もの間、主な経済的資産は金鉱、小麦畑、家畜、奴隷、土地といった物質であり、戦争や暴力によって奪ったり奪われたりしてきた。

ところがここ2−3世代で、経済が物ベースから知識ベースに変化し、戦争で獲得することができなくなった。

 

広島平和メディアセンター資料

 

グーグル本社:Photo from Tech Vision

 

日本政府は安全保障環境の悪化を理由に、軍事費を現在のGDPの1%から2%に増額しようとしています。

 

2021年の世界の軍事費シェアーは次の通りで、戦争を放棄した日本の軍事費は既に世界第5位です。

 

 

日本は本当に攻撃の脅威に晒されているのでしょうか?

 

北朝鮮について、アメリカのクリントン政権で国務長官を務め、北朝鮮との直接交渉に当たったWilliam J. Perryは次の通り分析しています。

 

「金正恩は熱核爆弾、弾道ミサイル、大陸間弾道ミサイルを含む核兵器による抑止力の主要な構成部分を完成させた。

彼の最重要目的はレジーム(政治体制)を維持することなので、自ら核兵器を使用してその目的を破壊することはない。

彼はこれから、北朝鮮の安全保障を維持しつつ、経済上の恩恵と世界的地位を得ることに取り組んでいくでしょう。」

 

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中国は広大な国土と地下資源、14億の人口、科学技術、生産技術・設備、情報と全て必要なものは持っており、日本を攻撃する理由も合理性もありません。

 

中国軍のサイバー部隊はサイバー攻撃に精通したテクノロジスト10万人を擁すると言われており、必要な情報や技術を世界中から殆ど無抵抗で獲得できるのです。

 

一人当たりGDP1.2万ドルから3万ドルを目指すために、唯一いくらでも欲しいものは安価な地下資源でしょう。

 

各国のサイバー部隊:熊谷亮丸氏の資料から

 

中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、1968年に国連アジア極東委員会が東シナ海に石油埋蔵の可能性を報告してからです。

さらに、同諸島は中国にとって重要な軍事拠点となりうると軍事専門家は指摘しています。

 

まず、国際的な理解を得るために、ハーグの常設仲裁裁判所に同諸島の領有権問題を提訴し、日本の主張を認める裁決を得ます。

そして、同諸島に航路標識や港湾など必要な施設を整備し、巡視船を常駐させれば、徹底した領海侵入などの取り締まりが可能になります。

 

 

ロシアとは平和条約が結ばれておらず、北方領土の返還問題を抱えたままですが、カードを握っているのはロシア側です。

 

ロシア艦船の津軽海峡通行などの問題はありますが、緊急の脅威であるとは思われません。

 

サハリン石油・天然ガス開発などへの参画を推進して、経済関係を深めることが唯一可能なアプローチですが、ロシアが現在の政治体制を維持する限り北方領土問題の解決は困難でしょう。

 

北方領土:内閣府資料

 

中国が台湾統一のため武力行使を否定しない考えを示唆するようになり、アメリカのバイデン政権は台湾への関与を強める発言を繰り返しています。

しかし、アメリカは台湾の帰属問題で中国と直接対決するほど愚かではありません。

 

ロシアのウクライナ侵攻へのアメリカの対応を見れば分かることです。

日米安保条約に基づいて、自衛隊がアメリカ軍への後方支援や武力行使を求められることなどありえません。

 

Photo from NHK

 

12月16日、政府は今後10年の日本の外交・防衛の基本方針を示した「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書を閣議決定しました。

 

日本は平和憲法のもと一貫して専守防衛を堅持してきましたが、今回初めて「国家防衛戦略」に「反撃能力の保有」が明記されています。

これにより自衛権行使の3要件に合致した場合、相手のミサイル発射基地などを攻撃することが可能になります。

 

NHK資料

 

日本政府は虚構の脅威に軍事力増強を決定しましたが、確実に迫りつつある脅威への備えは進んでいるのでしょうか?

 

Yuval Noah Harariは今後数十年の間に、人類は三つの脅威に直面すると警告を発しています。

 

1、システムの誤作動と人間の愚かさによって起きる核戦争のリスク

2、地球温暖化

3、AIによる既存の社会システムと経済システムの破壊

 

「これらはいずれもグローバルな脅威であり、国家を超えたレベルで協力し、行動しなければ立ち向かえないが、政治がナショナリズムの方向に向かいつつあることが解決を困難にしている。」

 

国際平和拠点ひろしま資料

 

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Photo by Stephan Corby

 

さらに、有効な対策が取られないまま少子化が進んでいます。

日本は確実に滅亡に向かっているのです。

 

 

参考文献:「未来を読む」AIと格差は世界を滅ぼすか

     Jared Mason Diamond他 著

     大野 和基 インタビュー・編