パートナーLaiの父親は9月21日に83歳の誕生日を迎えました。

 

男性の平均寿命が69歳のフィリピンではかなりの長寿で、日本の96歳に相当します。

 

 

誕生日パーティーの調理は、朝からダーティー・キッチンで始まりました。

 

用意された食材は地鶏、牛の骨付きすね肉、前日スーパーマーケットで買い求めた骨付き牛肉、野菜などです。

七面鳥は隣に住む弟が準備しています。

 

 

 

 

地鶏はAdobo(甘辛炒め)とTinola(スープ)になります。

 

牛の骨付きすね肉はBalbacua(シチュー)に、骨付き牛肉はBulalo(スープ)にと時間をかけて煮込みます。

 

 

 

 

午後に弟の家に行くと、七面鳥がゆっくりと丸焼きにされていました。

 

弟はココナッツ農場の中に住んでいます。

 

 

 

夕方7時に全員が集合してパーティーは始まり、子供4人と孫10人が父親の長寿を祝いました。

 

農業と牧畜一筋の人生ですが、決して平坦ではありませんでした。

特にマルコス戒厳令下では、200頭の肉牛と共に牧場を接収されるなど様々な迫害を受け、数年間この地を追われたこともあります。

 

 

 

 

父親はココナッツ農場の管理は既に委託しているのですが、農場の見回りは毎日欠かしません。

 

さらに、ココヤシやハードウッドの苗を育て、ヤギと地鶏の世話をして、穏やかな日々を送っています。

 

兄妹で資金を出し合って建築中のファミリー・モスクが完成すると、心ゆくまで祈りを捧げることができるようになります。

 

 

 

 

 

 

ところが、一族が所有するココナッツ農場は、210MWの石炭火力発電所が稼動しているAgro-Industrial Economic Zoneに隣接しており、父親は今、重大な決断を迫られています。

 

誘致企業が決まったらしく昨年に用地買収が始まり、彼の弟妹はココナッツ農場の一部を売却、または長期リース契約しました。

 

 

今年になって父親との用地買収交渉が始まったのですが、Agro-Industrial Economic Zoneなので誘致されるのは軽工業の工場だと思い込んでいたところ、中国の製鉄所であることが判明したのです。

 

環境対策が困難な重工業中の重工業です。

 

中国の製鉄所:Photo by Peter Velthoen

 

農場の一部を売却/リースして、その後もココナッツ農場を営み、現在の家で快適に暮らすことができるのか甚だ疑問です。

 

将来的にはEconomic Zoneがさらに拡大され、全てを売却/リースせざるを得なくなる可能性もあります。

 

 

 

さらに悩ましいのは、この製鉄所はフィリピンの経済発展に不可欠な初の本格的製鉄所(年間粗鋼生産量3百万トン)で、いわゆる国家プロジェクトともいえる案件であり、政府の環境アセスメントも終わっています。

 

父親がいくら反対しても、プロジェクトを中断させることは不可能でしょう。

 

 

祖父は、小学校の用地・施設、バランガイ・ホールや国道の用地などを寄贈し、地元Kamangaの発展に貢献しました。

 

父親は長男として、その祖父から受け継いだこの土地を簡単に諦めることはできないのです。

 

祖父が寄贈した学校

 

バランガイ・ホールと国道

 

2024年の操業開始を目指して、製鉄所の建設は急ピッチで進んでおり、考える時間はあまり残されていません。