フィリピンのCOVID-19感染症による犠牲者は、昨年8−10月のデルタ株による第4波が最多でした。

 

ピークの9月10日には1日の新規感染者は17.600人、死亡者は300人に達し、ミンダナオ島最大の都市ダバオ、地元ジェネラル・サントスでも同じ時期にピークを迎えました。

 

 

臨時隔離施設:Photo from PIA

 

感染が拡大すると行動規制が強化されるため、新規感染者、死亡者ともにピーク・アウトして、緩やかに減少するのが第3波までの傾向でした。

 

第4波では従来型ウイルスの2倍以上の感染力があり、重症化しやすいデルタ株が主流となったため、ピーク時の山が新規感染者、死亡者とも第3波の2倍の高さになっています。

 

第4波でさらに特徴的なことは、ピークから新規感染者数が急速に減少したことです。

これは学校閉鎖などの厳格な行動規制を実施した国に共通する現象だと言われています。

 

フィリピンでは2020年の新学期(6月)から全校閉鎖を継続し、感染拡大時には高齢者と未成年者の外出規制、住民の移動制限などを行いました。

 

1日の新規感染者数推移(第4波まで):DOH資料

 

1日の死亡者数推移(第4波まで):DOH資料

 

第4波は12月中旬には収束して、2年ぶりのクリスマスを祝いました。

ところが、クリスマスが過ぎた途端にオミクロン株の急速な感染拡大が始まったのです。

 

オミクロン株はデルタ株より重症化率は低いが、感染力は2−5倍あると言われており、その中でもさらに感染力が強いBA. 2がフィリピンの主流です。

 

1日の新規感染者は1月6日に2万人を超え、1月11日には30,800人に達して、米国のような異常事態の発生を予感させました。

 

1日の新規感染者数推移(第5波ピークまで):DOH資料

 

ところが、1月11日以降は新規感染者数が急速に減少して、2月下旬には1,000人程度になりました。

 

当時のワクチン接種率は50%で、オミクロン株に対する感染予防効果が高まる追加接種は医療従事者が受けていただけです。

 

第5波でも、その短期収束をもたらしたものは全校閉鎖などの行動規制であったと考えられます。

 

 

1日の新規感染者数推移(第5波まで):DOH資料

 

1日の死亡者数推移(第5波まで):DOH資料

 

現在までのCOVID-19感染症の状況を、感染者数・死亡者数の人口比率をもとにメンバーであるアセアン諸国およびG7諸国と比較してみました。

 

フィリピンはアセアン内では中位の成績ですが、感染者数の人口比率ではG7内で圧倒的な成績をおさめている日本を下回っています。

 

限られた予算と不十分な医療体制の下で、フィリピンは健闘していると言えます。

 

JHU資料

 

JHU資料

 

Ilustration from ASEAN PEDIA

 

3月になると、限られた地域が最も緩やかな警戒レベル1、2に指定されるだけとなり、地元ジェンサンでも、2年ぶりに街の賑わいが戻っています。

 

 

フィリピンでCOVID-19感染症の短期収束をもたらしているものは、ドゥテルテ大統領が頑として譲らなかった2年に及ぶ全校閉鎖だったのです。

 

しかし、大統領はCOVID-19感染症対策として全校閉鎖をしているわけではありません。

子供達の命を守るためです。

「失われた教育機会は取り戻せても、失った命は取り返せない」というのが大統領の信念です。

 

Photo from PCOO