イギリスの地質学者、生物学者ダーウィン(Charles Robert Darwin)は1859年の著書「種の起源」により、全ての生物種が共通の祖先から長い時間をかけて、自然選択のプロセスを経て進化したことを明らかにしました。

 

また、それに続く「人間の由来と性に関連した選択」では人類の進化と性選択について論じています。

 

Charles Darwin

 

Tree of life: Darwin

 

彼はイギリス海軍の測量艦ビーグル号の地球一周航海(1831ー1836年)に博物学者として乗船し、地質、化石、生物などに関する広範な調査を行うと同時に、膨大な標本を収集しました。

 

その調査結果とその後の研究により唱えられたのが、自然選択説です。

ある生物種に生じた遺伝的変異のうち、生存競争において有利に作用するものは保存され、有利でないものは除去されることを理論的に証明しています。

 

ビーグル号の航海:Webmaster

 

自然選択説:slideto.com

 

また、動物では生物一般に適用される自然選択に加えて性選択が、進化に一定の役割を果たしていることが述べられています。

 

これは雌をめぐる雄間の競争で、雄の直接的闘争と雌の配偶者選択により、多くの雌と交配する雄は、たとえ生存率が低くても、多くの子孫を残すというものです。

 

Photo by Margot Raggett

 

ダーウィンは進化と淘汰の理論によって性選択を説明しましたが、1970年代になって、Robert Triversは投資理論を提唱します。

 

雌雄の子どもに対する投資(時間の投資、親の資源の投資など)は種によってその相対量が異なっており、その違いが外見上の違いと一致していることを指摘し、投資量の大きな性が配偶者選択権を持つことを明らかにしました。

 

 

 

 

 

そして現在では、DNA-typing法と行動観察の比較により、性選択に関する衝撃的な事実も明らかになっています。

 

特に鳥類や霊長類の研究では、前者のつがいによる婚姻関係、後者の社会的高順位個体の独占的な交配が考えられていたのですが、驚くほど多くのペア外交配とその子どもの存在が報告されています。

 

進化の過程において、すべての動物は利己的であり、性選択は配偶者選択では終わらず、精子競争・精子選択のレベルまで及んでいるのです。

 

Photo by Ann1965

 

Photo by rundawi

 

雄孔雀の美しい羽、雄ライオンの立て髪、雄鶏の赤いトサカなど、雄の雌とは異なる形状は雌の好みに合致するものだと考えられてきました。

 

雌はなぜ派手な雄を好むのか?

好みの起源に関しては様々な観察や実験から次のような仮説が導かれています。

 

1、標識仮説

雄の特異な形状は、健康で良い遺伝子を持つ標識であり、子の生存率が高まる。

 

2、セクシーな息子仮説

セクシーな配偶者はセクシーな息子をもたらし、孫の数が増加する。

 

3、感覚便乗仮説

雌の好みに対する感覚上のバイアスに便乗して進化した雄は当然、雌を好み、自分の生存率が高まる。

 

東大井原教授講座

 

Photo by kiwibirdsareneat

 

さらに、動物には成熟とともに獲得される好みがあることが分かっています。

 

1、配偶者選択のコピー

周囲の仲間の行動を観察して、学習により好みを獲得する。

 

2、性的刷り込み

幼少時の父母との生活から、好みが獲得される。

 

Photo by Suzanne S

 

それでは、ヒトはどのように配偶者を選択しているのか?

ヒトの配偶者選択についても、多くのことが分かってきました。

 

ヒトの場合は、男女の子どもに対する投資量が他の動物ほど一方的ではないため、配偶者選択は双方向的ですが、好みの起源や成熟とともに獲得される好みの存在など違いはないようです。

 

1、ウェスト・ヒップ比(WHR)

WHRの低い女性が男性に好まれる。

*WHRの高い女性は、糖尿病、高血圧、胆嚢障害、月経異常になりやすい。

*WHRの高い女性は人工授精の妊娠率が低い。

ーー標識仮説

 

東大井原教授講座

 

2、主要組織適合性複合体(脊椎動物の細胞表面に存在する分子)(MHC)

*女性は自分とMHC型の似ていない男性の匂いを、より好ましく、セクシーであると評価する。

ーーセクシーな息子仮説

 

東大井原教授講座

 

3、顔に関する好みの獲得

*夫は妻の父に似ているが、妻の母には似ていない。

*妻は夫の母に似ているが、夫の父には似ていない。

ーー性的刷り込み

 

東大井原教授講座

 

私は高校一年のとき、学校の廊下ですれ違った同級生の妻の笑顔に一目惚れしました。

大学四年の乗船実習に出発する前に、彼女に求婚したのですが、返事はもらえませんでした。

承諾の返事をもらったのは、彼女が親の勧めで2回ほどお見合いをした後です。

 

私は妻の笑顔を心臓がドキンとするほど魅力的と感じ(セクシーな娘仮説)、男子厨房に入らずの世代だったので、妻に配偶者の選択権があった(投資理論)ということでしょう。

 

写真は共立女子高校

 

収入、年齢、外見、価値観などの条件を設定して配偶者を選択しようとしていても、結果は動物と同じ選択をしているということなのでしょうか?

 

そうであれば、雑音は排除して、自分の本能に従うのがベストな配偶者に出会う近道かも知れません。

 

その結果、1ダースも子どもを作りたいと思うような配偶者に皆が出会えれば、離婚は無くなり、少子化問題も一挙に解決です。

 

 

参考文献:

(1)動物における配偶者選択研究の動向 小林麻衣子

(2)配偶者選択と成熟 東京大学人類科学大講座 井原泰雄