フィリピンでは生活費が安く、メイド、運転手、介護士を雇うこともできます。
また、寛容でホスピタリティー溢れる人たちの中で、自由に、そしておおらかに暮らすことが可能です。
しかし、フィリピン移住の課題は医療保険です。
高齢になるに従って医療ニーズは高まりますが、フィリピンの公的医療保険PhilHealthは外国人には加入のメリットがあまりありません。
海外転出届の提出については法的に細かな規定はありませんが、おおむね1年以上海外に滞在する場合が目安となっています。
乾期で気温が比較的低い時期(日本の冬季)だけフィリピンに住む、或いは主たる居住地はフィリピンでも、定期的に帰国するような場合は、海外転出をせずに「国民健康保険の海外療養費制度」を利用することができます。
国民健康保険の海外療養費制度
(1)適用範囲
*日本国内で保険診療として認められている医療行為
*療養(治療)目的で海外へ渡航し、診療を受けた場合は適用外
(2)支給金額
*日本国内の医療機関で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費(海外で支払った額の方が低い場合はその額)から、自己負担相当額(患者負担分1-3割)を差し引いた額
健保連資料
海外転出をすると次のような扱いになります。
(1)国民健康保険、介護保険の加入資格を喪失する。
(2)日比間では租税条約が結ばれているため、所得税は居住国で、事業利得、投資所得は源泉地国で課税される。
(3)フィリピンでは年金は非課税となる。
海外転出しても、3か月に一度は帰国するのであれば、次の条件でクレジットカードの海外旅行傷害保険を利用することができます。
*期間:3か月
*利用付帯カード:旅費の一部をカードで支払うことが条件
*自動付帯カード:無条件
*適用範囲:傷病、後遺障害、障害死亡など(既往症は適用外)
海外転出をして、定期的に帰国する予定がない場合は、PhilHealthか民間の医療保険が選択肢になります。
PhilHealthの外国人への適用は次の通りです。
1.保険料
(1)SRRV(退職者ビザ)所有者:年額15,000ペソ
(2)ACR I-Card(就労者、就学者、居住者):年額17,000ペソ
2.保険料の支払い
(1)四半期、半年または1年毎
(2)滞納すると滞納期間分だけ資格停止される。
3.保険給付
(1)入院給付(24時間以上入院の場合)
*給付を受けるためには過去1年間に直前の3か月を含む9か月の保険料を支払っていること。
*病院のカテゴリーと病気のタイプに従って、病院費用と医師の技術料に対する一定額が給付される。
私が食中毒で私立病院へ入院(2日)したときの医療費とPhilHealthの給付は次の通りでした。
(2)通院給付
(a)日帰り手術
*給付条件は入院給付と同じ
*病院のカテゴリーと病気のタイプに従って、病院費用と医師の技術料に対する一定額が給付される。
(b)放射線療法
*給付条件は入院給付と同じ
*給付額は放射線のタイプにより1回当たり2,000/3,000ペソ
*年間45回が限度
(c)人工透析
*給付条件は入院給付と同じ
*給付額は1回当たり2,600ペソ
*年間90回が限度
(d)輸血
*給付額は1回当たり3,640ペソ
*年間45回が限度
(3)適用除外
次の給付は外国人には適用されない。
(a)Z Benefit Package(特定傷病給付)
(b)女性の出産時の給付
(c)外国で入院した際の給付
フィリピンの保険会社の医療保険で65歳以上の高齢者が加入できるのはPacific Cross社のみです。
同社の給付内容と保険料は次の通りです。
外国旅行中の入院はカバーされますが、既往症は適用外で、81歳以降は急激に保険料が高くなります。
1.一般原則
(1)医師、病院は加入者が選択可能
(2)認定された給付額の10%は自己負担
2.給付内容
(1)入院給付(ICU治療は1傷病・年間10日まで)
(2)手術給付
(3)救急外来、救急搬送、外地救急入院給付
3.給付限度額(1傷病当たり)
WARD:50万ペソ
S-PRIVATE:75万ペソ
PRIVATE:150万ペソ
4.保険料(年間)
私は前立腺肥大の既往症があるだけで比較的健康なため、現在はPhilHealthに加入しているだけです。
インプラント事故や食中毒による入院などがありましたが、年間の医療費は日本で払っていた税金と保険料(国民健康保険、介護保険)の総額30万円程度に収まっています。