フィリピンの貧困の象徴の一つとなっているストリート・チルドレン、管轄の社会福祉・開発省(DSWD)にも彼らの支援活動を行うNGOにもその正確な人数は分かっていません。

 

多くの情報を総合すると、フィリピン全土で少なくとも25万人、マニラ首都圏で7万人程度はいるものと推定されます。

 

Photo by Linus Escandor II

 

マニラ首都圏のストリート・チルドレン7万人は次のような状況に置かれています。

 

1.路上で働くが、帰る家がある子供:52,500人

2.路上で働き、路上で暮らす子供:17,500人

3.全く身寄りのない見捨てられた子供:前項の内7,000人

 

Photo from UNICEF

 

フィリピンは2012年以来、年率6%以上の経済成長をしているにも拘わらず、ストリート・チルドレの数は増えていると言われます。

 

経済成長しているが故に、地方から収入の機会を求めて都市のスラムに移り住む家族が増えているのです。

 

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子供たちの労働には、殆どの場合に搾取する大人が介在しています。

 

1.児童労働

2.児童売春

3.窃盗、スリ

4.物売り

5.物乞い

 

 

空腹や精神的不安を紛らわすため、彼らの66-85%がシンナーやトルエンなどを吸った経験があり、組織に取り込まれてマリファナや麻薬の密売人となる者もいます。

 

児童売春の結果、18%のストリート・チルドレンがHIVなどの性感染症に罹っているという調査報告があります。

 

また、ドゥテルテ大統領によって実施された麻薬戦争に多くのストリート・チルドレンが巻き込まれ、命を落としました。

 

Photo from PIA

 

Glyzelle Palomarはマニラのスラムで無職の両親と、姉、弟の5人で暮らしていました。

毎日がひもじく、学齢期になっても学校にも行けない生活に耐えきれず、遂に姉と一緒に路上生活をする決断をします。

 

物乞いをしながら路上生活を続けていましたが、10歳のときに運よくNGOの支援を受けるようになりました。

その後、姉、弟の3人でNGOの施設に受け入れられ、学校にも行けるようになったのです。

 

Photo from Childhope

 

フランシス教皇が来比して、University of Santo Tomasで若者との対話集会が持たれたとき、12歳のGlyzelleに教皇の前で話す機会が与えられました。

 

物乞いし、残飯を漁りながら食べ物を求め、拾い集めた段ボールを敷いて寝る路上生活について語った後、彼女は教皇に次のように問いかけたのです。

最後は手で顔を覆い、嗚咽で言葉になりませんでした。

 

「多くの子供たちが両親に見捨てられています。

また、多くの子供たちが大人の餌食になり、麻薬の密売や売春をさせられています。

私たちには何の落ち度もないのに、なぜ神はこのようなことをお許しになるのでしょうか?

そして、なぜ私たちに手を差し伸べてくれる人がいないのでしょうか?」

 

 

彼女に続いて14歳のJun Churaが彼の路上生活の体験を語り終えると、教皇は無言で二人を強く抱きしめました。

 

教皇は彼女の質問に答えるため、用意した原稿を脇に置き、40分にわたって苦難の本質、愛と信仰について考えを述べられました。

 

そして、教皇は苦痛の表情で彼女に話されました。

 

「あなたの質問の核心にふれる答えはありません。

あなたが話したつらい経験に私たちも涙を流すことができたときにだけ、あなたの質問に答えるということに近付くことができます。

なぜ子供たちはそんなにも酷く苦しんだのか?

なぜ子供たちは今も苦しんでいるのか?

人生のある種の真実は涙で浄化された目にだけ見えるからです。」

 

"The nucleus of your question doesn't have a reply.

Only when we too can cry about the things that you said, are we able to come close to replying to that question.

Why did chidren suffer too much?

Why do children suffer?

Certain realities in life we only see through eyes that are cleansed through our tiers."

 

Photo fron Naquem

 

最後に教皇は3万人の若者に向かって次のように語りかけました。

 

「私は皆さんの一人一人が自分に次のように問いかけることを薦めます。

私は涙を流すことを学んだであろうか?

空腹な子供、路上で麻薬を用いている子供、帰る家のない子供、見捨てられた子供、社会で奴隷のように使われ虐待されている子供を見たとき、どのように涙を流すかを?」

 

”I invite each one of you to ask yourselves: 

Have I learned how to weep, how to cry when I see a hungry child, a child in the street who uses drugs, a homeless child, an abandoned child, an abused child that society uses as a slave?"

 

Photo from SJC