ノルサランヘ~君を愛してる~

第26夜【願いと母親】


パブへと帰って来た彼女とアレン。そこで待って居たのは、ファインダーとマスターだった。

「ハルリュさん!その怪我っ、大丈夫ですか!?…確か、以前の任務で負傷していた場所ですよね?…また、傷口が開いてっ(汗)」

『大丈夫だって(苦笑)』

「その傷じゃぁ、大丈夫じゃないぜ、ソニョちゃんよぉ!早いとこ病院へ行きな!!」

『でも…マスター…』

「いいんだ、早く行って治療してもらえっ」
言われた通り、病院へ向かう一同。実はアレンも、そこそこに怪我をしていた。彼女の方が酷すぎる為、わかりづらい。さて、マスターは、ユウキが一緒に帰って来なかったことで、悟ったようだ。自分の息子のように、消えてしまったと。


病院で治療を受け、宿に帰ると、ことの次第を報告した。ユウキの残した予言以外を。そして、夜中近くなって、ユウキの最後を、ファインダーがマスターに報告しに行ったのだった。

『報告は、私がしなくちゃいけないのに…娘同然なんだって、聞いたばっかりで…』

「ソニョ、自分を攻めるようなこと、言わないでください」

『だって…すぐに、気持ちの切り替えなんて出来ないよ…』
ただでさえ、私の分身だったんだから
「そうじゃありません」

『え?(キョトン)』

「全てを、自分だけに背負わせないで、僕にも背負わせてください。あなたの力になりたいんです(目を離したくない…そう思ったから…)」

『ありがとう、アレン(微笑)』
やっぱ、優しいな…アレンは…

他人の心はわからないとは、よく言ったものだ。
「僕のことっ、いつでも頼ってくださいね!」

『はい。その時は、よろしくお願いいたします(にこり)』
アレンは、照れたように頭をかいた。そして、各々、自分の部屋に行き、休むことに。彼女も、疲れを癒す為に、深い眠りについた。

眠る彼女の耳に…

彼を愛してたの…たったの数回しか、言葉を交わさなかったけれど…きっと、一目惚れ。あの頃は、誰にも相手にされてなかったから、普通の対応が嬉しかったんだ。あと、最後になっちゃったけど、髪を褒められて幸せだった。もう少し、話をしたかったなぁ。そして…もう一度だけ逢いたかった…そしたら、私は言うの。ずっとずっと好きでしたって…友達になってくださいって…。彼はOKしてくれるかな?…また…照れたように笑ってくれたら嬉しいな
ねぇ…ソニョ…

あなたは…幸せになって…

そんな声が…聞こえたような気がした…。

次の日の朝のこと。ユウキについて、ファインダーがいろいろと、調べて来てくれた。ユウキは幼い時、海に落ちたことがある。それから、2日後に倒れ、原因不明の病気だと診断された。たぶん、この時にイノセンスと接触して、体内に侵入、その反動で倒れたのだろう。そして、エドラが入ることにより、安定したのだ。最終段階で、完全にイノセンスと一体化したと思われる。しかし、これはあくまで推測だ。人の予想を超えるのが、イノセンスである。実験中止となり、人魚にされた仲間も、日に日に亡くなっていった。サザーランドと出会ったのも、この頃かもしれない。そして、孤立していくユウキを支えたのが、両親とあのパブのマスターだ。けれど、父親は病にかかり、費用の為に働くことに。ユウキは、他のとこでは偏見の眼差しで見られる為、パブで働いていたのだ。そして、現在にいたる。なんとも、酷な運命だと、彼女は思ったのだった。


本部へ帰る時、マスターが駅まで見送りに来てくれた。しかし、一人ではない。

「そちらの方は?」
あ・・・・・
「この人はユウキちゃんの母ちゃん、アイラさんだ」
…母さん…
「初めまして。娘がお世話になったそうで、ありがとうございました(ペコリ)」

「いえ、とんでもないですっ(汗)」

『あのっ、夫を亡くされた矢先に、娘さんが亡くなって…辛い、ですよね?…大丈夫ですか?(汗)』

「心配してくれて、ありがとうございます。大丈夫だから安心して(にこり)…ユウキちゃんが消えてしまうことは、覚悟していたのよ…あの子自身が言っていたから」

「言っていた?」

「そう…マスターの息子さんが亡くなった時に…"私もいつか消えるの"って"だから、悲しまないで、笑顔で見送って"って言ってたのよ。親に向かって、悲しまないでなんて、無理よねぇ(苦笑)」

『そうですよね・・・・・そういえば、ユウキは自分のこと、成功に近いオリジナルで失敗作だって言ってました。だから…消えるのは必然って…泣かないでって言われましたっ』

「ユウキちゃんらしいぜ」

「そうね…」

『ごめんなさい!!!!最後の瞬間に居合わせていながら、ユウキを助けられませんでしたっ。ホントに、申し訳ありません!!』
おもいっきり頭を下げる彼女。それを見た母親は微笑み…
「謝る必要はないわ。きっと、誰が居ても助けられなかったもの…ねっ…顔を上げて(微笑)」

『でも…』

「でもじゃないぜ、ソニョちゃんよぉ。あんたが全てを背負い込む必要はねぇんだ」

「ソニョ、僕の言った通りでしょ?…あなたのせいじゃないんですよ(微笑)」

『アレン…うん、わかった…(にこり)』
その時、出発を告げる汽笛が鳴らされた。
「おっと、出発の時間だ」

「いろいろと、お世話になりました(ペコリ)」

「いいってことよぉ!(にっ)」

「また、いつか遊びに来てくださいね(にこり)」

『はいっ、さようなら!(微笑)』
私は、母さんも大好きだよ…きっと、ユウキも同じ気持ち…また会いたい


ユウキの母親アイラとマスターが見送る中、汽車に乗り込む。そして、窓から顔を出し、手を振りながら最後の別れをしたのだった。窓から乗り出す彼女を見て…

「あ・・・・」

「アイラさん?なにか?」

「ううん、何でもないわ…マスター…いえ、スカーさん(ただ、ソニョちゃんを見てると、ユウキちゃんがまだ、生きているみたいで…)」

「良い子に看取られて、ユウキちゃんも幸せだったぜ、きっと」

「そうね(微笑)」


汽車が見えなくなるまで見送った。ちなみに、マスターのフルネームは、スカー・ザイル・エドラ…発見者の名前からとか、ベタな話…。さて、ユウキの中にあったイノセンスを手に、本部へと帰る彼女とアレンだった。これから起こることは何か?彼女も予想だにしないことなのでした。


第26夜 END



『あ・・っ・・オ・・スさん…っや、いや・・・・・いやぁーーーー!!!!!!』


叫びながら、ベッドから起き上がったミカエル。その頬には涙が…

また…か…

そう思いながら、水を張っておいた桶に、タオルを浸した。そして、絞ったタオルで、顔をよく擦る。実は、最近よくある事なのだ…夢の内容はまったく覚えていないのに、すごく胸が苦しくなる、悲しい夢…。

なんなんだ?"アイツ"が来てから、多くなった…ただの夢じゃないのか…?

そう考えながら、ベッドから出て、窓の方へ。
そして…

あ…休みだからって、この時間は不味いだろ…(汗)

太陽が、南の空高くに来ていた。
『はぁ…寝坊した…(汗)』
がっくりと肩を落として、部屋を出る準備に取りかかった。団服ではなく、私服に着替える。久しぶりの休みだった。

あの夢は、もしかすると失われた記憶の一部かもしれない。最近、そう思うようになった。アイツとは、ラグエル・マグナス。

さて、準備を整え、部屋を出る。
扉の前で…
『ん~…何をしようか…?』
どこに行くか?朝ごはん食べてねぇけど…夢見、悪かったし…気分転換もしたいなぁ。あっ、たまには外へ食べに行こうか。うん、そうしよう!

そう思い、廊下を歩き出す。気分転換と食事を両立した選択だ。

ノルサランヘ~君を愛してる~

第25夜【伝説の終焉】


日は傾き、空は茜色になっていた。彼女の目の前にいるレベル2の能力は、何でも球体に出来ること。水でも火でも岩でもだ。飛んでくる攻撃を避けながら、機を伺う彼女。

「チョロチョロしやがってぇ(ムス)」

『攻撃が一辺倒なんだよっ、あんたは!岩ばっかり投げてないで、他のも出してみれば?(フッ)』
…水…水を出せっ
「むぅ~、調子に乗りやがってぇ!目障りだっ!(怒)」
バカにされたアクマは、怒りと共に、岩の攻撃に織り混ぜて、水も出してくる。彼女の待ち望んだ水の球体だ。岩を交わし、不意を狙われた風に、球体に入る。なぜなら…
『うっ(汗)』
…海王ノ矛(ポセイドン・ザ・ジャベリン)…!!!

これを使う為だ。この技は、水を操ることが出来る。実は、空気中の水分を集めて槍の形にしているのだ。だから、球体の水を使うことにより、更に強力な攻撃となる。
「んなバカなぁ!?・・・・ギャァァァ!!!!!!!!」
殺ったと思っていたアクマは、完全に油断していた。その為、パワーアップした一撃で破壊することが出来た彼女。すると、球体も弾け飛んだ。呼吸を整えて、ユウキを見た彼女は驚く。球体から出たユウキは、なぜか淡い光に包まれているのだ。そのユウキの頭の中では、数々の光景が浮かんでは消えていた。過去のことから、まだ視ぬ未来のことまで…
「…イノセンス…あなたを待たなくてもよかったんだね(ボソッ)…あぁ・・・・あなたは、"ラビ"っていうんだぁ…"私も"愛してた」
ユウキは、微笑みながらも涙を流していた。そして、彼女の方を振り返り…
「私の想いを、あなたに託すね…"もう一人の私"…あなたなら離れても、絶対に出逢えるから(微笑)」

『え?…どういうこと!?…ユウキ!』
彼女が駆け寄ろうとすると、ユウキは首を横に振る。そして、もう一度だけ微笑んで、崖に歩いて行った。
『ユウキ!?(びっくり)…何をする気なのっ!?…そっちに行っちゃダメ!(汗)』

「自分のことは、自分が一番わかってる…私はもう…消えるんだ…最後くらい本物の人魚のようになりたい…」

『何を言ってっ!?』

「前に言ったでしょ?成功に"近い"オリジナルだって…私も失敗作なのよ。永遠に人魚になれる訳じゃないの。だって私は、本物じゃないもの(苦笑)…それとね、ソニョ。イノセンスは私の中にあるの。だから、私が消えるのは必然なんだよ…いつからあるのかは、わからないけど…他の人より実験結果がよかったのは、これのお陰だったんだと思う」

『それならっ、どうして消えるの!?…イノセンスがユウキの中にあるなら、あなたはアレンと同じ寄生型の適合者っ、消えるなんて可笑しい!可笑しいよっ!(泣)…消えないで…この世界の私…(ボソッ)』
彼女は、うつむき泣き出した。泣く気などなかったのに、自然と溢れ出す涙。
「ううん、泣かないでソニョ。私は、イノセンスの適合者じゃないのよ。私はただ、"入れ物"に選ばれただけ…わかったの…あなたを助けた時から、カウントダウンは始まっていた…今度、人魚になったら最後だって…。そして、このイノセンスは、あなたを待っていたのよ…いえ…エクソシストを待っていたという方が正確なのかなぁ」

『そんな、そんなことって!』

「ソニョ…最後に、あなたに遇えて嬉しかった…この街に来たエクソシストが、あなたでホントによかったよ・・・・・バイバイ(微笑)」
彼女は走り、ユウキに手を伸ばすが、届くはずもなく、海に落ちていった。そして次の瞬間、海面から高らかにジャンプして見せたのは、人魚姿のユウキ。けれど、月夜に浮かぶその身体は、透明になっていったのだった。そしてユウキは、最後の力を使い、彼女の居る崖の上までジャンプをし、涙を流す彼女に笑いかける。しかし、ユウキの身体は崩れ、泡になり始めた。
『ユウキっ、ユウキ!!私、私は…(泣)』
…あなた…なのっ
「言わなくていいよ、ソニョ。わかってるから…」
彼女の言わんとしていることを察し、首を振るユウキ。そして、彼女に微笑みかけると、跡形もなく泡となった。生きる伝説は文字通り、泡となって消えた…彼女の目の前で…。そして、ユウキが居た場所には、水溜まりがあり、その中にイノセンスが本当に落ちていた。この為だけに、わざわざ海から上がったのだ…彼女の為に…。海底で光っているように見えたのは、ユウキの中にあるイノセンスを視ていたから。彼女は、今更ながら思う…ラビ達がここに立ち寄っていた理由は、これだったんじゃないかと…エドラはイノセンスの残存、溢れたパワーの残りということ。それに気づいたんじゃないかと…ユウキの中に入ったことも…いや、それだけはブックマンだけがわかったのかもしれない。


彼女が泣き崩れていると…

「やっと見つけましたよ」

『ア、レン…』
他のアクマを破壊し終えたアレンが立っていた。そして、彼女に駆け寄ったアレンは、ユウキが居ないことに気づく。
「ソニョ、ユウキさんは!?」

『彼女は…』
そう呟き、水溜まりに目線を向ける。それだけで、何が起きたのかを察したようだ。苦虫を噛み潰したかのような顔を浮かべるアレン。そして…
「…ソニョ…どうしてっ、また、何も言わずに行ったりしたんですか!?…僕、言いましたよね?…なにかあったら、言ってくださいってっ」

『ごめん、なさい…(泣)』

「とにかく、何があったのか教えてください(汗)」


レベル2との戦い。ユウキがイノセンスを持っていたこと。そして、それと引き換えに、ユウキが消えなくてはならなかったことを話した。

『私達さえ、この街に来なければっ、ユウキは生きていられたのに!…私は、その引き金を引いてしまった!!私さえ居なければっ(泣)』

「そんなことっ!(汗)…ソニョ…マスターの言っていたことを思い出してくださいっ。元々、回数が限られていたんですよ。ソニョのせいじゃない!」

『違う!!私のせい!私が海に落ちなければっ』

「ソニョ!!!」
アレンの怒りのような大きな声に、ビクリと反応する彼女。改めて、アレンへと顔を向けた。そこには、先ほどの声とは裏腹に、優しい笑顔が。
「ソニョ…たぶん、今は何を言っても、気休めにしかならないと思います…だけど、これだけは言えます。ユウキさんは、ソニョにイノセンスを預けることが出来て、幸せですよ、きっと」

『そんなこと…「いいえ。今度、人魚になったらと言っていたのに、アクマが居るから、消えずに頑張っていたんですよ…ソニョに託す為に…これを、幸せと言わずして、なんと言うんですか?(微笑)」

『ユウキ・・・・あっ!そういえば、あの時っ、ユウキは確実に死んだと思った…ホントに気絶だけだったのかな…』

「それはもしかすると…人魚伝説の1つ、人魚の生き血を飲むと不老不死になるというのに関係しているんじゃないんですか?…ユウキさん自身が人魚ですから、多少のことでは亡くならないんですよ」

『そっかぁ…(しょぼん)』

「あっ(青ざめ)」
また、余計なことを言って、彼女をへこませてしまったアレン。やっと、泣き止んだところだったのに、またしても、涙を浮かべ始めた。
「えっと、あのっ。そのイノセンス!無事に、本部へ持っていくことが、ユウキさんの供養になると、僕は思います!!元気を出してくださいっ(汗)」

『アレン…(苦笑)』
・・・・あれ?似たようなこと・・・・・あ!!サザーランドの時にっ!
『・・・クスッ(笑)』

「え?(キョトン)ソニョ…どうしましたか?突然…(汗)」

『ごめんごめん。実はね、前に同じことを、私も言ったの思い出しちゃって…そうだよね…同じだよね(微笑)』
この世界の私だからって、何も変わることはないんだ。ユウキ…私、頑張るよ…あなたの分まで
「はいっ、無事に帰りましょう(にこり)」


こうして、みんなの待つパブに向かったのだった。ユウキの言った予言のようなものはなんなのか?この時の彼女には、わからないのでした。


第25夜 END