ノルサランヘ~君を愛してる~

第25夜【伝説の終焉】


日は傾き、空は茜色になっていた。彼女の目の前にいるレベル2の能力は、何でも球体に出来ること。水でも火でも岩でもだ。飛んでくる攻撃を避けながら、機を伺う彼女。

「チョロチョロしやがってぇ(ムス)」

『攻撃が一辺倒なんだよっ、あんたは!岩ばっかり投げてないで、他のも出してみれば?(フッ)』
…水…水を出せっ
「むぅ~、調子に乗りやがってぇ!目障りだっ!(怒)」
バカにされたアクマは、怒りと共に、岩の攻撃に織り混ぜて、水も出してくる。彼女の待ち望んだ水の球体だ。岩を交わし、不意を狙われた風に、球体に入る。なぜなら…
『うっ(汗)』
…海王ノ矛(ポセイドン・ザ・ジャベリン)…!!!

これを使う為だ。この技は、水を操ることが出来る。実は、空気中の水分を集めて槍の形にしているのだ。だから、球体の水を使うことにより、更に強力な攻撃となる。
「んなバカなぁ!?・・・・ギャァァァ!!!!!!!!」
殺ったと思っていたアクマは、完全に油断していた。その為、パワーアップした一撃で破壊することが出来た彼女。すると、球体も弾け飛んだ。呼吸を整えて、ユウキを見た彼女は驚く。球体から出たユウキは、なぜか淡い光に包まれているのだ。そのユウキの頭の中では、数々の光景が浮かんでは消えていた。過去のことから、まだ視ぬ未来のことまで…
「…イノセンス…あなたを待たなくてもよかったんだね(ボソッ)…あぁ・・・・あなたは、"ラビ"っていうんだぁ…"私も"愛してた」
ユウキは、微笑みながらも涙を流していた。そして、彼女の方を振り返り…
「私の想いを、あなたに託すね…"もう一人の私"…あなたなら離れても、絶対に出逢えるから(微笑)」

『え?…どういうこと!?…ユウキ!』
彼女が駆け寄ろうとすると、ユウキは首を横に振る。そして、もう一度だけ微笑んで、崖に歩いて行った。
『ユウキ!?(びっくり)…何をする気なのっ!?…そっちに行っちゃダメ!(汗)』

「自分のことは、自分が一番わかってる…私はもう…消えるんだ…最後くらい本物の人魚のようになりたい…」

『何を言ってっ!?』

「前に言ったでしょ?成功に"近い"オリジナルだって…私も失敗作なのよ。永遠に人魚になれる訳じゃないの。だって私は、本物じゃないもの(苦笑)…それとね、ソニョ。イノセンスは私の中にあるの。だから、私が消えるのは必然なんだよ…いつからあるのかは、わからないけど…他の人より実験結果がよかったのは、これのお陰だったんだと思う」

『それならっ、どうして消えるの!?…イノセンスがユウキの中にあるなら、あなたはアレンと同じ寄生型の適合者っ、消えるなんて可笑しい!可笑しいよっ!(泣)…消えないで…この世界の私…(ボソッ)』
彼女は、うつむき泣き出した。泣く気などなかったのに、自然と溢れ出す涙。
「ううん、泣かないでソニョ。私は、イノセンスの適合者じゃないのよ。私はただ、"入れ物"に選ばれただけ…わかったの…あなたを助けた時から、カウントダウンは始まっていた…今度、人魚になったら最後だって…。そして、このイノセンスは、あなたを待っていたのよ…いえ…エクソシストを待っていたという方が正確なのかなぁ」

『そんな、そんなことって!』

「ソニョ…最後に、あなたに遇えて嬉しかった…この街に来たエクソシストが、あなたでホントによかったよ・・・・・バイバイ(微笑)」
彼女は走り、ユウキに手を伸ばすが、届くはずもなく、海に落ちていった。そして次の瞬間、海面から高らかにジャンプして見せたのは、人魚姿のユウキ。けれど、月夜に浮かぶその身体は、透明になっていったのだった。そしてユウキは、最後の力を使い、彼女の居る崖の上までジャンプをし、涙を流す彼女に笑いかける。しかし、ユウキの身体は崩れ、泡になり始めた。
『ユウキっ、ユウキ!!私、私は…(泣)』
…あなた…なのっ
「言わなくていいよ、ソニョ。わかってるから…」
彼女の言わんとしていることを察し、首を振るユウキ。そして、彼女に微笑みかけると、跡形もなく泡となった。生きる伝説は文字通り、泡となって消えた…彼女の目の前で…。そして、ユウキが居た場所には、水溜まりがあり、その中にイノセンスが本当に落ちていた。この為だけに、わざわざ海から上がったのだ…彼女の為に…。海底で光っているように見えたのは、ユウキの中にあるイノセンスを視ていたから。彼女は、今更ながら思う…ラビ達がここに立ち寄っていた理由は、これだったんじゃないかと…エドラはイノセンスの残存、溢れたパワーの残りということ。それに気づいたんじゃないかと…ユウキの中に入ったことも…いや、それだけはブックマンだけがわかったのかもしれない。


彼女が泣き崩れていると…

「やっと見つけましたよ」

『ア、レン…』
他のアクマを破壊し終えたアレンが立っていた。そして、彼女に駆け寄ったアレンは、ユウキが居ないことに気づく。
「ソニョ、ユウキさんは!?」

『彼女は…』
そう呟き、水溜まりに目線を向ける。それだけで、何が起きたのかを察したようだ。苦虫を噛み潰したかのような顔を浮かべるアレン。そして…
「…ソニョ…どうしてっ、また、何も言わずに行ったりしたんですか!?…僕、言いましたよね?…なにかあったら、言ってくださいってっ」

『ごめん、なさい…(泣)』

「とにかく、何があったのか教えてください(汗)」


レベル2との戦い。ユウキがイノセンスを持っていたこと。そして、それと引き換えに、ユウキが消えなくてはならなかったことを話した。

『私達さえ、この街に来なければっ、ユウキは生きていられたのに!…私は、その引き金を引いてしまった!!私さえ居なければっ(泣)』

「そんなことっ!(汗)…ソニョ…マスターの言っていたことを思い出してくださいっ。元々、回数が限られていたんですよ。ソニョのせいじゃない!」

『違う!!私のせい!私が海に落ちなければっ』

「ソニョ!!!」
アレンの怒りのような大きな声に、ビクリと反応する彼女。改めて、アレンへと顔を向けた。そこには、先ほどの声とは裏腹に、優しい笑顔が。
「ソニョ…たぶん、今は何を言っても、気休めにしかならないと思います…だけど、これだけは言えます。ユウキさんは、ソニョにイノセンスを預けることが出来て、幸せですよ、きっと」

『そんなこと…「いいえ。今度、人魚になったらと言っていたのに、アクマが居るから、消えずに頑張っていたんですよ…ソニョに託す為に…これを、幸せと言わずして、なんと言うんですか?(微笑)」

『ユウキ・・・・あっ!そういえば、あの時っ、ユウキは確実に死んだと思った…ホントに気絶だけだったのかな…』

「それはもしかすると…人魚伝説の1つ、人魚の生き血を飲むと不老不死になるというのに関係しているんじゃないんですか?…ユウキさん自身が人魚ですから、多少のことでは亡くならないんですよ」

『そっかぁ…(しょぼん)』

「あっ(青ざめ)」
また、余計なことを言って、彼女をへこませてしまったアレン。やっと、泣き止んだところだったのに、またしても、涙を浮かべ始めた。
「えっと、あのっ。そのイノセンス!無事に、本部へ持っていくことが、ユウキさんの供養になると、僕は思います!!元気を出してくださいっ(汗)」

『アレン…(苦笑)』
・・・・あれ?似たようなこと・・・・・あ!!サザーランドの時にっ!
『・・・クスッ(笑)』

「え?(キョトン)ソニョ…どうしましたか?突然…(汗)」

『ごめんごめん。実はね、前に同じことを、私も言ったの思い出しちゃって…そうだよね…同じだよね(微笑)』
この世界の私だからって、何も変わることはないんだ。ユウキ…私、頑張るよ…あなたの分まで
「はいっ、無事に帰りましょう(にこり)」


こうして、みんなの待つパブに向かったのだった。ユウキの言った予言のようなものはなんなのか?この時の彼女には、わからないのでした。


第25夜 END